昇進・昇給は可能なのか

また②のように24時間フル稼働の工場の社員は休息時間に配慮しながら昼夜3交代のシフトを組んでいるところが多い。そこで丸々1日休みを増やすとしたら、さらに休息時間を切りつめるか、増員は避けられない。週休3日制を導入するために増員するとは思えない。また、営業職でも法人や個人の顧客対応の社員は相手の都合によって臨機応変に仕事をしている。仮に週休3日制にすると、ライバル企業に顧客を奪われかねない。もちろん顧客やライバル企業も週休3日にすればよいが、自社だけ導入してもビジネス上の損失は免れないだろう。

時短勤務と同様に必ず③の問題は発生するだろう。給与が2割減るのだから当然、週5日勤務を前提とした仕事量を減らすことになる。しかし仕事量は減ってもパフォーマンスが高ければ昇格・昇進が可能な仕組みになっているのかどうかが問われる。時短勤務の場合、ある外資系企業は給与の等級をワンランク下げるところもあれば、別の先進企業では時短勤務の課長や部長が存在するところもある。

また、仮に成果やパフォーマンスだけを見て人事評価や昇進・昇格を判断するとしても、週休3日の社員は効率の高い働き方が求められる。社内でも高い評価を維持しながら週休3日を使ってプライベートな活動に打ち込むことが可能な人はどれくらいいるのだろうか。

制度ができても使う人が増えるとは思えない

自民党の猪口試案は、週休3日を選択できるのは正社員に限定している。しかし④のように非正規社員は必ずしも時給制社員だけではない。職務や地域限定などのフルタイムの月給制非正規社員も少なくない。こうした人たちにも週休3日を選択できる権利を認めなければ不公平だろう。

猪口試案は以上の課題を抱えており、仮に「選択的週休3日制」が実現したとしても、行使する人が増えるとは思えない。やはり最大の障害は給与の削減だ。