目的系は習慣化し、発見系は一度で終わる
図表2をご覧いただきたい。この図は、代表的なECサイトがそれぞれどんなポジションにいるかをざっくり示したものだ。上に行くほど発見系の買い物、下に行くほど目的系の買い物が多くなる。
ここで特徴的なのは、「習慣化の度合い」を示した横軸だ。左端は1回目の買い物。2回目、3回目と同じものを買っていくほど右側に移動する。つまり習慣化する。
こうして見ると、目的系の買い物は習慣化しやすく、発見系は1回で終わってしまうことがほとんどだということがわかる。考えてみれば当然だが、たとえばSNSで職人が特別な製法でつくった味噌を見つけ、「おいしそうだ!」と思ってリンク先のECサイトで買ったとする。
商品が気に入った2回目以降は、その味噌を買う目的があって同じサイトに行くことから、発見系の商品はその時点で目的系に変わっていることにもなる。基本的には発見系商品のまま習慣化していくことはないが、今後、これまでの概念を覆して、2回目にも3回目にも発見のある商品が登場するかもしれない。
店舗に行く前からなにを買うかは決まっている
ここまでが、デジタル時代の2つの「商品の探し方」の話だ。
本書では、人や企業の具体的な動き・現象・流れを中心に解説するため、理論的な話はこのくらいにしておきたい。ただ、生活者目線でいえば、私たちの買い物のほとんどは、「買い物の仕方」と「商品の探し方」で分類することで説明がつく。
たとえば、誰かからおすすめされた本をネットで注文したのであれば、「発見系商品」を「レコメンドショッピング(他者のおすすめをもとに購入)」したことになる。雑誌を定期購読しているのであれば、「目的系商品」を「ストップウォッチショッピング(時間をかけずに済むよう定期購入や購入履歴からの再購入)」していることになる。皆さんも今日買い物したものを分類してみると、買い物という行動を客観的に知ることができるだろう。
日用品ではあまりないかもしれないが、たまに買うものや少し高価なものを購入する場合、今や店舗で商品を買う人の大半は、事前にネット上で商品に関する情報を調べた上で購入の意思を固めている。つまり、買う(商品を受け取る)場所が店というだけで、買うかどうかの意思決定を店でしているわけではない。
皆さんも思い当たる節があるだろう。たとえば数万円するような電化製品を買う場合は、ネットで調べてから店に足を運ぶこと、あるいはネットでそのまま注文することが多くなっている。
店舗に行って実物を見てみたいと思うことはあるかもしれないが、店員の説明を受けて心変わりするようなことはほとんどない。
ある商品を深追いしているうちに、店員よりも自分のほうが詳しくなっていることだってある。特にこうした商品の場合、買うものを決めずに店舗に行き、その場で購入の決断をするという買い物は、今や主流の買い物プロセスではないのだ。