ヨーロッパがロシアのガスに依存しすぎるという懸念

米国はなぜノート・ストリーム2の建設に反対しているのか? 理由はいくつかある。

まず、ヨーロッパがロシアのガスに依存しすぎるという懸念。すでに今でさえ、ヨーロッパのガスは半分以上がロシア産だ。それに、米国はNATOに莫大な経費をかけてヨーロッパを防衛している。何から防衛しているかというと、ロシアの脅威からだ。

それなのに、その肝心のヨーロッパ(実はヨーロッパではなくドイツなのだが、それについては後述)が、ロシアと組んで商売に夢中。これでは馬鹿を見ているのは米国だということになる。

米国は2020年6月には制裁をさらに強める法案を出した。独政府のエネルギー担当者らは憤慨し、「われわれは米国の属国ではない」、「内政干渉をやめろ」という意味の陳情書を米議会に提出したが、効果なし。米国の制裁法案は米議会を通り、制裁の対象はさらに広がった。

つまり、それまでは、工事に直接関わった企業のみが対象であったのが、保険会社などのサービス業、さらには、工事を認可した役人までが、米国内の口座の凍結、あるいは入国禁止措置の対象となった。

ヨーロッパのほとんどの国が建設に反対するワケ

一時、これはトランプ大統領の陰謀だなどという噂も飛び交ったが、民主党も強硬だった。「シェールガスを売りたいがために邪魔をしているのだろう」というドイツ側の非難にもびくともせず、「われわれはヨーロッパがロシアの手に落ちるのを防ごうと思っているだけだ。ガスはロシア以外のどこからでもお買いください」と突き放した。

しかし、ノート・ストリーム2に反対しているのは米国だけではない。実は、ヨーロッパのほとんどの国が反対なのだ。

ポーランドとウクライナは、ノート・ストリーム2が完成すれば自国を通過している陸上パイプラインが必要なくなり、膨大なパイプライン使用量が見込めなくなるから反対。バルト海3国やスウェーデン、デンマークは、ロシアのヨーロッパに対する影響力が増強することを警戒して反対。

また、イタリアなど南欧諸国は、ドイツが完全にヨーロッパのエネルギーの蛇口を握ることになるので反対。それどころか、ドイツはロシア制裁の必要性を説いて回りながら、自分だけは強引にもノート・ストリーム2を進めようとしているため、南欧諸国の反発は大きかった。

さらに肝心のEUも、ノート・ストリーム2はEUが目指している原産国、ルート、販売者の多角化という目的に反するとして反対している。