皆さんご存じの通り、昨年4月の緊急事態宣言に引き続き2回目が出されています。1回に比べると国民は緩い対応をしています。前回はGDP30%実質14兆円の損害を出したのに比べ、今回は半分の被害で済んでいます(注17)

菅義偉首相は2日、栃木県を除く10都府県で3月7日まで延長することを表明しましたが、流行が落ち着くにつれ一つずつ規制が解かれていくのではないかと思っています。

コロナウイルス対策による被害の要因

まとめると、新型コロナウイルスによる被害は以下の3点に要約されると思います。

1.人類は、完全に封じ込めることはできない。必ず、散発し蔓延する。
2.その国の医療体制の普及充実度や国民の公衆衛生に依存する。
3.季節性コロナウイルスやワクチンによる獲得免疫が影響する。

日本では、2と3が完備されていたので、1に対応したユルユル型の管理が功を奏しました。とてもよい方策だったと考えています。欧州では医療費削減により2が、インドは2と3が十分ではなかったことが推測されます。

病院の受付
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです

日本では、厳しい規制を行うとそれによる被害の方が大きくなってしまいます。1年以上経過し、国民の集団免疫は上昇しました。疫病は、ふつうは国土に広まった最初が一番被害が大きいものです。変異型にも、この期間に追加獲得した免疫による交差免疫で対応できることでしょう。

緩い日本のコロナ対策はむしろ多くの命を救った

リアルな生活は人を守ります。

私は、緊急事態宣言でも通勤電車に乗り診療を続けました。患者さんもがんばってクリニックを受診されました。採血、検尿、心電図、画像などの外来検査で大病が発見できた方がたくさんいらっしゃいました。

胆石による閉塞性胆管炎、虫垂炎、尿管結石の方もいました。心臓にステントを入れたり、大動脈や膵臓、婦人科の手術をされた方もいました。緊急を要する脳の病気がMRIで判明した方もいらっしゃいます。リモート診療では行えない判断でした。

コロナで混乱・遅延する外来をかき分け、総合病院の先生方と協力して加療しました。感謝される患者さんの電話をひきつぐスタッフも皆、クリニックを開け続けたことを誇らしく思ってくれています。医療現場では、感染症の一部にすぎないコロナ以外の病気対応の方がはるかに多かったのです。

もし、欧米のような厳しいロックダウン(都市封鎖)が長期間なされ、私がクリニックに行けなかったり、患者さんが家で症状を過剰に我慢してしまったりしていたら手遅れになっていました。日本のコロナ対策がユルいからこそ、むしろ多くの命を救うことができたのです。

また、私のクリニックには妊婦の患者さんが来院されます。コロナ禍と言われる最中でも、新しい命の誕生に携わることができました。今、お子さんの誕生を待っている患者さんも複数いらっしゃいます。最近では、ある栄養士さんは出産を経て、元気に復職されました。医師としてうれしいエピソードです。