「変えられること」と「変えられないこと」があると認める

不機嫌にならないためには、ムダに心配したり、怒ったりするのをやめることも大切です。それにはまず、「変えられること」と「変えられないこと」を明確に分ける必要があります。

たとえば「変えられること」として、同僚への仕事の頼み方、上司へのあいさつ、子供への声かけ、夫の体調管理などを挙げたとしましょう。こうした「変えられること」であれば、自分の行動次第で不機嫌になる機会を減らせます。

一方、「変えられないこと」としては、仕事をしない同僚、口うるさい上司、勉強しない子供、無気力な夫などを挙げたとしましょう。こちらの「変えられないこと」の場合は、自分がいくら悩んだところで、どうにもなりません。いつまでも悩み続け、不機嫌がひどくなるだけです。

過去と他人は変えられない

精神療法の1つである森田療法には「過去と他人は変えられない」という基本的な考え方があります

子供の不勉強に悩む母親がいます。受験を控えているのに、子供は遊んでばかり。それを見るたびに母親は怒りをぶつけるのですが、子供の反発を受けるだけで、状況はまるで改善しません。

しかし、冷静に考えてみましょう。子供を親の思い通りに変えることなど不可能です。「私は子供を変えなければならない」と思うから、変わらない子供を見て親は不機嫌になり続けるのです。

ですから、「子供のことはそうそう変えられない」と割り切ってしまうことです。「いい大学に行ってほしいけど、ダメなら仕方がない。子供の人生なのだから」と割り切る。

そうすれば心の負担が軽減され、イライラも収まります。そのうえで「自分で変えられることから変えていこう」と意識を転換しましょう。

自分の変えられる範囲で行動を変えてみよう

たとえば、子供に対して、いつもとは違うやわらかい言葉をかけてみてはどうでしょう。子供は「いつもとなにか感じが違う」と気づきます。そこから、やがて行動に変化が生まれるかもしれません。

あるいは、母親自身がなにかの勉強を楽しんでいる姿を見せる、というのも1つの手です。親が勉強を楽しんでいる様子を見れば、子供は「勉強って楽しいのかもしれない」と感じるかもしれません。

実際、私が見る限り、勉強のできる子の親は、親自身が勉強好きというケースが多いのです。とにかく自分の変えられる範囲で行動を変えてみて、なにがどう変化するのかを試してみるだけでもいいのです。