中国ファミリーマートが抱える提携先との訴訟
ファミリーマートの中国事業も停滞が続く。ファミリーマートは中国市場の開拓に乗り出すため、2009年に中国食品大手、頂新グループに20%出資した。しかし、「長期にわたるライセンス使用料の未払いなどがあった」(ファミリーマート幹部)ことが発覚、関係は次第に悪化した。ファミリーマートは2018年10月、頂新側が保有する合弁会社株の売却を求める訴訟を起こした。昨年4月には訴訟の審理継続が決まっている。
提携から20年近くたち「中国ファミリーマート」は店舗数で2800を超えた。しかし、両社の関係はいまだ改善していない。裁判の行方次第では店舗網を一気に手放さなければならない事態もありうる。
今回の人事ではそのファミリーマートの社長に「岡藤会長の右腕」とされる細見研介執行役員を送り込む。細見氏は小売りのグループ会社を束ねる「第8カンパニー」のトップを務めている。
ファミリーマートは人工知能(AI)を搭載したロボットを活用した商品補充を検討しているほか、2021年春には従業員のいない無人店舗を都内で開く。「第8カンパニー」で培ったDX(デジタルトランスフォーメーション)やAIを駆使した新業態を目指す考えだが、「伊藤忠が乗り込む形での再建にファミマのオーナーの反発も大きい」(ファミリーマート幹部)との声もある。
CITIC事業の再構築とファミマの経営立て直しが急務
ファミリーマートは2009年に中堅のエーエム・ピーエム・ジャパン、2016年にはサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスと統合して店舗数ではセブン‐イレブンに次ぐ2位に躍り出た。しかし、「寄り合い所帯ゆえに岡藤氏が一方的に支配しようとすると空中分解する」(前出ファミリーマート幹部)との懸念がある。
中国事業を巡っては、三井物産が昨年末に中国ネットサービスの騰訊控股(テンセント)と提携。12億人のユーザーを抱えるテンセントと組んで日本企業の進出を後押しするなど、同国の開拓に乗り込む。
伊藤忠には「どこまで中国に食い込んでいるのか、判然としない」(大手証券アナリスト)との指摘もある。それだけに岡藤会長留任には「巨額の減損リスクを抱えるCITICについて、しっかりした筋道をつけるまで、逃げ出してもらってはかなわない」(同)との見方がある。
停滞するCITIC事業の再構築とファミリーマートの経営立て直し。岡藤会長CEOの“焦り”は解消されるのか。「三冠王」の次の展開に注目が集まっている。
※編集部註:初出時に「化学品」「アベノマスク」についての記載で誤解を招く表現があったため、該当部分を削除しました。お詫びして訂正します。(2月5日19時40分追記)