中国最大の国有複合企業であるCITICに出資

伊藤忠は2015年、タイ財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループと共同で中国最大の国有複合企業であるCITICに10%ずつを出資し、日中タイ連合の枠組みを作った。

中国の広州市にある超高層ビル「CITICプラザ」。
中国の広州市にある超高層ビル「CITICプラザ」。(写真=iStock.com/gionnixxx)

「中国最強商社」を自負し、毎年100人規模で中国語研修を実施する伊藤忠だが、まだ目立った成果は上がっていない。2018年にはCITICの株価低迷で1433億円の減損を計上した。その後もCITICの株価は下げ止まらず、出資時の13.8香港ドルから半額以下の6香港ドル台まで下がっている。

伊藤忠幹部は「CITICの収益は安定している。株価だけで減損計上を判断するのは早計だ」と話すが、「米中摩擦や香港の民主化に伴う混乱などを考えると再度の減損を迫られるのは避けられない」(大手会計事務所)との見方は根強い。

その減損額を3000億~4000億円超とはじく試算もある。そうなれば、今期の純利益予想が吹き飛ぶ額だ。

減損計上する場合はパートナーであるCPもあわせて実施するのが通常だ。だが、「次に多額の減損を計上するようだと、CPとの関係も悪化する」(大手証券アナリスト)との声もある。

完全子会社化するファミマの業績は「1人負け」

ファミリーマートはもっと深刻だ。伊藤忠幹部は「なかなかファミマから情報が上がってこない」と口にする。

昨年7月、伊藤忠はファミリーマートを株式公開買い付け(TOB)で完全子会社化することを決めたが、その背景にはこの幹部が言う「ファミマから売れ筋情報や顧客のデータ、売り上げ状況などが上がってこない」といういら立ちがあった。

岡藤氏は社内で「マーケット・イン」の徹底を求めている。商社が仕入れた商品やサービスを顧客に押しつけるのではなく、「消費者が何を欲しがっているのかを事前に把握して、タイムリーに提供する」というのがその趣旨だ。そのマーケット・インを進める上で店舗からのデータが上がらなければ仕入れや商品開発はままならない。

業績が好調なら伊藤忠側の不満も出ないところだが、新型コロナ禍で出勤が減る中、都心部に集中的に出店しているファミリーマートは1人負けの状態が続く。商品力の低下も加わり、2020年3~8月期の連結最終損益は107億円の赤字(前年同期は381億円の黒字)と「1人負け」の状況だ。