能動的な心情を自分でつくり出せるか
それは「浮く」でした。なぜそう思うのかと聞いたら「これまでの全部が浮くから」と。
子どもたちはちゃんと考えているんです。これまでの正解を聞いて、「野菜や果物は水に浮く」と考えたわけです。でも、答えは「沈む」なんですよね(笑)。
それでは、最後のジャガイモはどうでしょう? 答えは「沈む」です。「野菜や果物は水に浮く」という仮説は正しくありませんでした。
でも、別の仮説が浮かんできませんか? そう、基本的に地下で育つものは水に沈んで、地上で育つものは浮くというわけです。
そして、このクイズのあと、子どもたちは家に帰ってお風呂にいろいろな野菜や果物を浮かべてみたのです。
これが、簡単にいえば非認知能力です。このクイズで、なにが浮く浮かないといった知識を教えようとしたわけではありません。子どもたちはクイズを通じて、自分の頭でうんと考えたのです。
そして、「面白い」だとか「やってみよう」「調べてみよう」という気持ちになりました。
こういう能動的な心情を、自分のなかでつくり出せる力――それが非認知能力なのです。
AI時代になくなる仕事、残る仕事
いま、この非認知能力が「子どもたちの人生を決める」ともいわれています。
というのも、時代が大きな曲がり角に来ているからです。これからは人工知能、いわゆるAIが社会を大きく変えていきます。そして、そのAIをどういう方向で使っていくかを考えられる人間が必要とされる。
AIの時代になるからこそ、これまでとちがった角度からものを見ることができる、あるいは新しいものや発想を生み出せる力が求められるのです。それこそ、テストでは測ることができない、非認知能力そのものでしょう。
いま、「スマートガスメーター」の導入が全国で進んでいることをご存じですか?
これは、ガスの使用量を無線通信回線で把握するというメーター。つまり、これまで検針員がやっていた仕事がなくなるということです。
なくならない仕事は、教師や保育士など人間相手の仕事、それからデザイナーといった創造性が必要な仕事などに限られてきます。
単純な仕事は基本的にどんどんなくなるので、これからは自ら仕事を生み出すような人間になっていかないとならない。それがいいかどうかはともかく、そうならざるを得ないのです。
それこそ、他人とどう接するか、どういう新しい発想を持って創造性を発揮するかといったことは、なかなか点数にできるものではありません。それらはまさに、非認知能力だということです。