ゴマすり一本で副社長を目指した人

「ブルシット・ジョブ」の5類型のうち「取り巻き」というものがあるのを説明しましたが、実際に「俺はゴマすり一本で副社長になる!」と宣言した人が過去にいました。もちろん、周囲の人間たちに公表したというのではなく、私だけに話してくれたことなのですが、私がまだ課長か部長で、彼は総務の部長でした。

その後、さまざまな部署を経験して出世していきましたが、彼は最後は専務まで昇進しました。本当にゴマすり一本だったのです。

権力のある人にピタッとくっついて、彼が好む趣味や食べ物と、ありとあらゆることを把握していた。ゴルフの接待ももちろん欠かさない。上司が好きな歌は何度も聴いて覚えていた。

宣言どおりの副社長にはなれませんでしたが、専務まで行った。あともう一歩でした。私は非常に驚き、脱帽しましたね。それは並々ならぬ努力でした。

たとえ「取り巻き」=太鼓持ちでも、やるなら徹底的にやらないとダメです。専務まで出世したその人は、「ブルシット・ジョブ」というよりも、結果的によい仕事をしていたのではないかとも思います。

なぜなら、彼の「ゴマすりで副社長になる」という野心には噓がなかったからです。彼の「ゴマすり」はおべっかだったかもしれませんが、噓ではなかった。自分は通常の仕事では他人よりも劣るかもしれないということがよくわかっていた。だから、自分のできることを懸命にやったのです。結果、彼は組織に必要な人間になっていたと思います。組織がまとまるための重要な潤滑油になったのです。

それは、管理職としてどうかという点は置いておくとしても、やはり組織にとっては必要な存在なのです。そのために、徹底的に努力した人でした。

【関連記事】
不要不急の仕事を生み出す「9割の中間管理職」は不要である
会議で重箱の隅つつく「めんどくさい人」を一発で黙らせる天才的な質問
アイリスオーヤマの最年長社員が「67歳の社長室長」であるワケ
まもなく絶滅する「普通のサラリーマン」を待ち受ける三重苦
「1位は3000万円超」平均年収が高いトップ500社ランキング2020