話題のものほど「上がりそう」と勘違いしてしまう

行動経済学では「利用可能性ヒューリスティック」と言われる心理があります。これはどういうことかと言うと、身近なものやわかりやすいものは、起きる確率が高くなると勘違いすることを言います。どうやら投資信託を選ぶ際にもこの「利用可能性ヒューリスティック」が影響を与えているように思えます。具体的に言うと、知っているもの、最近話題になっているものは上がる確率が高そうに思えるということなのです。

テーマ型ファンドに当てはめて言えば「株のことはよくわからないけど、AIやフィンテックはブームだし、これからの時代はESGが大事だものなぁ」と言った具合に誰でも想起しやすいことから、関連する株も上がるのではないか? と感じてしまうのです。

③既に高値になっている場合が多い

ところが多くの場合、一般のニュースや話題で取り上げられているということは、既に株式市場でも相当関心が高まっているということですから、株価もかなり高値圏に来ていることが多いのです。

「これからの日本にとって重要なテーマだ!」「長期的に成長が期待できる分野だ!」……。それはそうかもしれませんが、株式市場というものは当面利益が上がっていなくても短期的には実態をかなり先取りして動く場合が多いものです。言わば関連するテーマの銘柄であれば何でもかんでも株価が上昇するということがしばしば起こります。したがってテーマ型ファンドが設定された時点では往々にして投資対象の銘柄が既に高値圏になっているという可能性が高いということなのです。証券会社での40年近い私の経験を振り返ってみてもテーマがもてはやされた時に設定されたテーマ型ファンドの多くは、その後悲惨な結末を迎えているのです。

急騰局面で売却しておいたほうが無難

ただし、こうしたテーマ型ファンドは短期的には儲かる可能性もあります。高値圏にいるということはそれだけ株価の動きも大きくなっているため、設定してごくわずかの間に急騰することもあり得るからです。そうなると一気に人気が高まり、更に売れるということになりますし、当然販売するほうも非常に強気で勧めてくるでしょう。

ところがそこで買うのは非常に危険だと考えるべきです。仮にテーマ型ファンドを既に購入してしまった人であれば、そうした急騰局面では売却しておいたほうが無難だと思います。先ほども述べたように私の経験から言えば、今までに設定されたテーマ型ファンドのその後を見ても、長期的に成長が続き、大きくなるとは到底思えないからです。