ベンチャー投資をテレビで可能にする

──ビジネスをゼロから考えるという発想は面白い。

今は混乱して新しい挑戦が求められる時代だが、新しいものを生み出すときは、このようにゼロから考えることが大切だ。

僕が吉本に入社してダウンタウンたちと「心斎橋筋2丁目劇場」という小さな劇場をつくったときも、ゼロから考えた。「アンチ吉本、アンチ花月」を掲げて、この劇場をどうしようかと既成概念にとわられず考えた。

例えば、「チケット、作る? 作らへん?」「漫才する? せえへん?」「とりあえず漫才はやろか」とか。「チケットのもぎりも、中高生と同じくらいの子にしてみよか。そしたら、お客さんとすごく仲良くなれる。『今日、誰、見にきたん?』『誰と誰、面白かったん?』『今、どんなものが流行ってるん?』とか、その子たちに聞いたら、皆わかるようになる」とか。

それで、心斎橋筋2丁目劇場からは、ダウンタウンをはじめ、今田耕司、千原兄弟、ナインティナインなどが生まれていった。

──BSのコマーシャルなしというのは画期的だと思うが、事業である以上、ビジネスモデルはどうするのか。

BSでは「起業番組」をつくる。例えば、秋田のどこかのおばあちゃんが田んぼを耕してお米を売る番組をつくる。そこでつくるお米を、村の青年団と協力しながら、ブランド化して商品にする。AIやGPSなどのテクノロジーを使って新しい農業をつくるとか、新しい流通網をつくって日本だけでなく中国でもそのお米を売ってみたり。そういうチャレンジを20話くらいのシリーズにする。賛同してもらえる人からは、クラウドファンディングという形で資金を集める。会社もつくって拡大させてIPO(株式公開)もする。

ビジネスの指標は、賛同してくれる仲間がどれくらいいるかということなので、視聴率は関係ない。テレビの最大の課題は視聴率至上主義だが、「よしもとチャンネル」では、それを打破して、視聴率はまったく気にしない。吉本興業は数%の出資金を出してリターンを得るというモデルだ。

──視聴者はテレビショッピングのような感覚でベンチャー投資ができるようになるということか。

そのとおりで、今、財務上のスキームをつくっているところだ。唯一の難点は、最初の番組の制作費をどう捻出するかということ。例えば、30分番組を3万円という僅かな制作費でつくれるか。そのために、前述した地方のために働きたいという芸人たちが力を貸し知恵を出すというわけだ。