「最期ぐらい親孝行したい」があだになる

さらにこんなデータもあります。明治安田生活福祉研究所とダイヤ高齢社会研究財団が2015年に発表した「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査」報告書によると、介護のために転職した正社員が新職場でも正社員として働けたのは、男性が3人に1人、女性が5人に1人です。転職前後の年収を比べると、男性は557万円から342万円と4割減り、女性は350万円から175万円と半減しています。

また、2013年1月に厚生労働省が行った「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート」調査では、退職して介護に専念した場合、39.0%の人が「経済面で負担が増した」と回答し、さらに「非常に負担が増した」と回答した人は35.9%にもなりました。介護で会社を辞めてしまうと、その後の人生設計が狂ってしまうことが多いのです。

Q夫さん(65)は介護離職の経験者です。子どものころ、両親にかわいがられて育ち、「自分が親の面倒をみるしかない」と考えていました。そして、P子さんと同じく、ガンを患った父の面倒をみたいと、15年前に会社を辞めてしまいました。

大手企業で正社員として働き、管理職に昇進してからは高給取りになっていました。両親と同居して悠々自適のシングルライフを満喫していたところ、人生が一変したのは父のガンが発覚してからです。父を病院に連れていくのに有給休暇を消化するようになり、「これ以上休むと職場に迷惑がかかる」と思い始めます。プロジェクトのリーダーになるなどやりがいを持って仕事に取り組んでいたので、人一倍責任感も強かったのです。

「あと2週間、会社を休んでいれば…」

「父の世話をしたいから会社を辞めたい」と直属の上司や同僚に伝えると、引き止められましたが、勢いで介護離職をしてしまいました。退職金と貯金を合わせて数千万円あるので、何とかなると思ったのが間違いでした。何でもお金で解決する習慣だったため、貯金がみるみる減っていきます。一番の誤算は、退職してからなんと2週間後に父が亡くなってしまったことです。「あと2週間、会社を休んでいれば辞めずにすんだかもしれない」と、後悔しました。