アラサーに必要なのは格好良さではなく「身だしなみ」

それから試行錯誤した結果、アラサーからの身だしなみの方向性がわかりました。

「もうカッコよくなくていい」

それが僕が出した答えです。

思い返せば、若いときは「雰囲気」「オシャレ感のあるコーディネート」などを重視した自己満足ファッションでしたよね。言わば「イケメンになるための武器」としてアイテムを買い足していたのです。「雰囲気イケメン」なんていう言葉があったように、オシャレな佇たたずまいを目指す人が多かったように思います。

ですが、アラサーから行うべきことは言葉通りの「身だしなみ」であり、これはオシャレとはまったく別物だと考えます。ためしに『広辞苑』で「身だしなみ」の意味を調べると、こう書いてあります。

・容姿・服装・言葉遣い・態度などに対する、心がけ。「―のよい人」
・心がけとして教養・技芸などを身につけていること。「紳士としての―」

この辞書の意味合いからもわかるように、身だしなみとは「人に対して自分を整える」という、とてもビジネス的な見ための捉え方です。

これなら「ブランクがあってもできそうだ……!」と着手しましたが、思ったより簡単かつ結果が出るのも早いので、身だしなみをアップデートするのがどんどん楽しくなってしまったのです。

センスなんていらない。実験台は自分。学生のときより自己投資できるお金もある。

身だしなみはセンスや技術なんてなくても簡単、かつ、すぐに結果が出る、社会人にとって好都合なビジネスツールの磨き方だなと感じました。

オンライン時代こそ自分の顔をチェックせよ

ほぼ毎日、東京23区内を出歩いているのに、「この人、素敵な身だしなみだなあ」と思える人を目にするのは、1日で数人程度。非常に少ないです。そのたびに「これはチャンスでしかない!」と、身だしなみに対するモチベーションが上がります。

なぜなら、身だしなみに気を使う人が少ないということは、「最大のビジネスツールを磨けていない人が多い」ということを意味しているからです。ライバルが身だしなみを整えていない可能性が高いからこそ、今が絶好のチャンスなのです。

今ではテレワークが増え、ズームなどのオンラインで商談やプレゼン、会議などをする人が増えたと思います。そのとき、パソコン画面に映った自分を見て、「俺は普段、こんな顔をしてプレゼンしていたのか……」と愕然とした方は少なくないはずです。

リアルの世界だと自分の姿を見ることは少ないですが、オンラインといった画面の世界だと自分を俯瞰して見ることができますよね。肌の調子や目の下のクマ、ヒゲの剃り残しなど、普段気にしていなかったことをまざまざと見せつけられる格好になるでしょう。

「こんな顔をしていて結果は出せるのか?」

自分を客観視することで、思わずそう感じてしまうような不潔要素が見えてきます。そのときに「自分こそ最大のビジネスツールだから」と、気にして見るとよいきっかけになります。

身なりを整えれば結果が出る科学的な理由

何か商品を買うとき、広告の写真より実際のものがチープだと、「あれ……?」と違和感を覚えませんか? それが広告の写真ではなく人の場合であっても、「写真と違うんだけど……」はよく聞く話ですよね(笑)。要は、信頼を置けないものは大体、外見と中身が合っていません。

宮永えいと『大人男子の「超」清潔感ハック』(KADOKAWA)
宮永えいと『大人男子の「超」清潔感ハック』(KADOKAWA)

いくらよいプレゼン内容でも、疲れ顔でシャツがクシャクシャでは「最高だね!」とはならないと思いますし、逆に清潔感があってハキハキした挨拶から始まれば、相手も「しっかり聞きたい」と思ってくれるはずです。

かつて『人は見た目が9割』(新潮新書)という本が流行りましたが、まさにこの題名は事実なのです。

心理学では「メラビアンの法則」というものがあり、人が相手の第一印象を判断するうえで、「視覚情報(見ためなど)」と「聴覚情報(声など)」による影響は合計93%にも及び、「言語情報(話の内容など)」はたった7%にすぎないと証明されています。

少し極端ですが、プレゼン資料や商材の精度を高めるよりも、自分の身なりを整え、自信をつけることで声や言動にも反映させていくほうが、仕事の結果が出るということです。

かつては芸能人しか許されなかった「画面に映る人」に、誰もがなることができるのが今という時代です。一番売り出すべき商品は自分であり、こだわりを持って手塩にかけて育てるべきです。

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