※本稿は、渡辺さちこ、アキよしかわ『医療崩壊の真実』(MdN)の一部を再編集したものです。
日本の病床はどれくらいあり、どれくらい稼働しているのか
新型コロナ感染拡大の中で入院の受け入れの第一線と考えられたのは感染症病床(1758床)、第二種感染症指定医療機関の351施設です。第二種感染症指定医療機関は、国、公立(自治体)、公的(日赤病院、済生会病院など)で9割が担い、民間は1割です。コロナ前の感染症病床の稼働率は2017年が3.3%、2016年が3.2%、つまり感染流行の局面にならない限り、平時では極めて低水準の稼働率です。
しかし一旦コロナが拡大すると、感染症病床は152万超の病床全体に占める割合は0.1%あまりであること、そして新型コロナは全国一律に流行するのではなく入院が必要な患者は都道府県や第二種感染症指定医療機関の地域によって大きな差があるため、「感染症病床」だけでは足らず「一般病床」での受け入れが必須となりました。
実際、第1波のピークである5月4日は1万1935人、第2波のピークである8月10日には1万3724人のコロナ患者(これらは宿泊・自宅療養が可能であった軽症者も含む)が入院しており、感染症病床だけでは全く不足した事になります。
次に日本の病床について国際的なデータと比較して検証しましょう。
先進国の中でずば抜けて病床数が多い日本
まず、日本の医療法でいう一般病床、療養病床、感染症病床、結核病床、精神病床全ての病床をOECD加盟国と比較すると(2018年or latest available)、人口千人当たりの病床数は日本が13.1と突出して多く、OECD加盟国平均である4.7の2.8倍です。
図表1をご覧ください。これは人口千人当たり全ての病床数の1990年から2017年までの推移を国際比較したものです。日本を含めどの先進国も人口当たりの病床数を削減してきた一方で、日本だけ完全に我が道を突き進んでいるというか、まったく「次元」が違うことがわかります。国民皆保険制度もあり、医療提供体制も充実しているといわれることの多いドイツでも日本の6割程度です。
また、90年代初頭に唯一、日本に近い割合で病床数が存在していたのはスウェーデンだけですが、一入院包括払い(DRG/PPS:Diagnosis Related Group/Prospective Payment System)を導入するなどの取り組みで病床数を大きく減らし、諸外国と同じくらいの水準になっています。その意味では、日本は世界の中でも独自の道を歩む「病床大国」といってよいでしょう。
先進諸外国が90年代から病床数を減らしつつ「平均寿命」や「健康寿命」を伸ばしてきたことを考えると、「病床数」の多さは「人の健康」と比例するものではないことがわかります。