遅刻やドタキャン癖は、時間に対する意識の低さの表れ
「相手の時間を奪う」というマナー違反について、もうひとつ例を挙げてみましょう。
誰かと待ち合わせをするとき。スマホや携帯電話が今ほど普及していなかった頃は、場所と時間をきっちり決めないと、容易に相手と落ち合うことはできませんでした。ゆえに時間についてもっと気を配っていましたよね。けれど今は、なんとなく約束をしていれば、多少……いえ、大幅に時間に遅れることになっても(もちろんそれがいいこととは言いませんが)相手さえ許してくれれば、その日の約束は続行されますし、大したすれ違いは起きません。
けれど、いつでもどこでも連絡が取れてしまう文明の利器を手に入れた私たちは、つい相手の時間を奪ってしまっていることに疎くなるもの。相手のタイミングより自分の都合を優先してしまい、明らかに約束の時間を過ぎてから「少し遅れます」なんていう連絡をしてしまっては、相手はきっと待ちぼうけ。「だったらあそこに寄ればよかったな」「もっと早くわかっていれば私も急いで来る必要なかったかも」なんて思いながらも動くに動けず、集合場所で無駄な時間を過ごさせてしまうかもしれません。だったらどこかのカフェで時間をつぶせばいい、というのはもっともなのですが、それは待たされた側が言うことで、待たせた側が言っていいことではないのです。
マナーは思いやりです。そして思いやりとは言い換えれば想像力。自分がそのアクションを起こしたら相手はその先どんな思いをするのかを、少しだけ先回りして考えてみること。そうすると、たとえば大切な友人や仕事のパートナーが、あなたが遅刻するとは知らずにもしかして家の用事をいくつかあきらめることも、はたまた時間に間に合わせようとタクシーを使って待ち合わせ場所に来る必要もないのです。遅れるのは時に仕方がないことだとしても、連絡は前もって、早めに。「早め」の目安は相手に負担をかけないタイミングのこと。逆に誰かに待たされたときは寛容でいたいものですが、今さら誰にも叱られないことだからこそ、もっと繊細に気をつけたいところです。