※本稿は神谷悠一、松岡宗嗣『LGBTとハラスメント』(集英社新書)の一部を再編集したものです。
初対面ですぐ「彼氏/彼女いるの?」と聞く人たち
職場でたまに、「彼氏いるの?」とか、「彼女いるの?」と聞いてくる人がいます。ひと昔前までは職場のそこここで飛び交っていたこのような投げかけも、最近では「いきなり仕事に関係のないプライベートなことに突っ込んでくるな」と、やや面食らう人も多くなってきたように思います。特に、初対面というその人のさまざまな背景が本人から語られていない状況で、「彼氏」「彼女」というプライベート性の高い話題を持ち出してしまうと、思わぬ「地雷」を踏んでしまいかねないものです。
セクシュアルマイノリティに対する投げかけの場合も、この手の話題は地雷となります。「彼氏/彼女いるの?」の何気ない一言は、当事者の頭に「そもそも同性パートナーだし……」とか、「自分の性自認は男性だけど、職場では女性として過ごしているし、パートナーの性別は女性だから、これを変に思われないように説明するには……」などと頭の中で整理して話さなければならなくなる、そんな事情を呼び起こします。しかし、このような事情をそのまま答えることはできないため、どうこの会話を切り抜けるべきか、自分を守るための、うまく繕った会話を始めることとなります。