苦肉の策

共和党の2人の候補の戦略を見ると、苦しい状況から生まれたローブ氏の戦略がどんなものであったかが読める。

ローブ氏の戦略の特徴は、まず、綿密な選挙区状況の分析にもとづき、選挙民を決定的に分割する軸をつくる。それには、その軸になる要素をつかまなければならない。

調査と分析の結果、出てきたのが、民主党候補を社会主義者、共産主義者と決めつけ、激しい攻撃をする戦略だった。

さらに黒人層も所得が増え、都市近郊に住むようになり、産業の発展により黒人のエリート層が増加していることから、ローブ氏の戦略は彼らを捉えることにお成功した。同時に、トランプ大統領は、州知事や州の官僚、特に選挙管理委員会長を批判し、前回の選挙に「ごまかし」があったことを強調した。

共和党支持者がトランプ大統領に嫌気がさし、投票所に行かなくなっては大変だと、徹底的に投票に行くよう戸別訪問で呼びかけた。トランプ大統領の訪問から来るネガティブな影響を恐れて、苦労して練った作戦であったと思う。

天才参謀の敗北

前出のFOXニュースの特別選挙報道に戻ろう。

同局の看板政治番組である「ショーン・ハニティ・ショー」で、これまで姿を現さなかったローブ氏がついに登場したのである。

このショーは、政治分野でトップの視聴率の番組だ。司会者であり、保守系の政治評論家でもあるハニティ氏がさまざまな質問をした後で、締めくくりに「共和党が勝ちそうですね」と持ち掛けると、ローブ氏の顔があいまいとなり、何とも答えなかった。

いつもは、そのような質問には丁寧に答える人である。筆者の感覚として、もしや共和党は勝てないと悲観的になったのではないか、と読んだ。そして、筆者自身悲観した。