「選挙の天才」「影の大統領」カール・ローブ

ローブ氏は、アメリカの政治コンサルタントである。ジョージ・W・ブッシュ政権において次席補佐官、大統領政策・戦略担当上級顧問を務めた。

ブッシュ政権下で、ホワイトハウスにおいて数々の役職を兼ねていたことやその権力の大きさから、ディック・チェイニー副大統領とともに「影の大統領」、あるいは「カール国王」などと呼ばれていた。CIA職員の身分漏洩疑惑や、ホワイトハウスの司法省人事介入に対し捜査が行われるなどの事件があったが、大統領令により打ち切られた。その背後にローブ氏がいたといわれる。

結局、2007年8月31日付でホワイトハウスにおけるすべての役職を辞任。ホワイトハウスを去った。

ワシントンDC議事堂は政治を分断した
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トランプとローブのせめぎ合い

筆者の興味の中心は、ローブ氏がこのジョージア州の上院議員特別選挙でどう動くかにあった。

トランプ大統領が現地に来ることは、明らかに本人の強い意志があった。しかし、共和党候補のケリー・ロフラー氏とデビッド・パーデュー氏にとっては、トランプ大統領の来訪が選挙にマイナスになることは自明であった。

トランプ氏にそれを「するな」ということが言える人物が共和党にはおらず、結局ジョージアに来ることになった。

トランプ氏にとって、2人の候補を応援し、その当選を助けることは二義的な目的であった。彼の真の目的は、11月の大統領選挙が不正であると訴え、選挙の結果、つまり自分が負けたことをひっくり返すことにある。その機会として、ジョージア州の上院議員特別選挙を利用したのであった。

ローブ氏は、そのような動機を持つトランプ大統領を自分の戦略の中に組み込んで勝利戦略を組む、という難しい状況に、好むと好まざるとにかかわらず追い込まれたと思う。