36歳になった瞬間に求人数が半減

このように、35歳を過ぎてから転職しようとすると、若かった頃に比べて格段にハードルが上がります。しかも、35歳を過ぎると求人数そのものが半減し、その後も40歳、45歳と5歳上がるごとに半減していきます。年齢による選別の実態は表には出ませんが、この厳しい現実を、私は長年の現場経験を通してはっきりと実感してきました。

「年齢に応じたスキルを持っているのに、36歳になった瞬間に自分の価値が半減するなんて納得いかない」と思う方も多いでしょう。ただ、半減するというのは、あくまでも求人件数から見た「一般的な市場価値」の話。その人に確かな価値やスキルがあれば、数は少なくとも必ずほしがる企業があるはずです。

私は以前、リクルートで求職者と直接関わる仕事をしていました。優秀なのに35歳以上というだけで転職先が見つからない、そんな人が非常に多く、ずっと「何てもったいないんだろう」と思ってきました。そこで退職後に、35歳以上を対象にした転職支援サービスを立ち上げたのです。

このサービスは、転職希望者のスキルや要望に応じて、求人広告を出していない中小企業へ売り込みをかけるもの。成果としては、毎月2000人ほどの転職希望者のうち、他のサービスを併用している人も含めて約7割が転職に成功しています。

35歳以上でもニーズは確実に存在する

つまり、転職希望者とその人をほしがる企業とをうまくマッチングできさえすれば、35歳以上の転職は決して難しくないのです。特に中小企業は人材不足に悩んでいるところが多く、「優秀な人材がいれば年齢にかかわらず採用したい」と思っているケースが少なくありません。

問題は、転職者がそうした企業と出会えるかどうか。「35歳転職限界説」がささやかれるのは、この出会いが一定の年齢を境にガクッと減るからでもあると思います。

一方、ここ数年の転職業界では「35歳転職限界説は過去のもの」という論調も出てきています。しかし、こうした話はエグゼクティブやスペシャリストに強い人材紹介から発信されていることがほとんど。ハイクラス人材の転職は確かに活況ですが、そこに当てはまる人はほんの一握りです。

大部分の転職者にとっては、35歳転職限界説は今なお生きていると言っていいでしょう。この現実をしっかり見つめた上で、年齢にこだわらずいい人材を求めている企業を、積極的に探していただけたらと思います。

(構成=辻村 洋子)
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