テーブルにスマホがあるだけで会話がつまらなくなる

食事やお茶をしている最中に相手がスマホを取り出すと、毎回イライラする。自分だってちっとも偉そうなことを言えるような人間じゃないのに。ただ私には、相手に感謝される以外にも、スマホを取り出したくない自分勝手な理由がある。スマホが目の前にあると、会話がつまらなく思えるからだ。スマホが魅力的すぎて、周囲に関心がもてなくなってしまう。

ある研究で約30名に、知らない人と10分間自由に話してもらった。テーブルを挟んで座り、一部の人はスマホをテーブルに置き、それ以外の人は置かなかった。その後、被験者たちに会話がどのくらい楽しかったかを尋ねてみると、視界にスマホがあった人たちはあまり楽しくなかった上に、相手を信用しづらく共感しにくいとも感じていた。言っておくが、スマホはただテーブルの上にあっただけで、手に取ることは許されなかった。

これもさほど驚くことではない。当然のことながら、ドーパミンが何に興味を向けるべきか指示していたのだ。毎日何千という小さなドーパミン報酬を与えてくれる物体が目の前にあれば、脳は当然そっちに気を引かれる。スマホを手に取りたいという衝動に抵抗するために、限りある集中力が使われる。無視するというのは能動的な行為なのだ。その結果、あまり会話についていけなくなる。

1通のメールのためにディナーが台無しに

友人とのディナーの感想を300人に調査した研究者も同じ傾向を目にすることになった。被験者の半数は、ディナーの最中にメールが届くからスマホをテーブルに出しておくよう指示された。残り半数はスマホを取り出すなと指示されていた。食後、スマホがそばにあった被験者は、ディナーはいまいちだったと感じていた。極端に差があったわけではないがそれでも結果は明白だった。一言で言えば、目の前にスマホを置いていると相手と一緒にいるのが少しつまらなくなるのだ。

しかし、1通のメールのためにスマホを出したからといって、ディナー全体が台無しになることはないのでは? ならないかもしれないが、被験者たちはスマホをスタンバイさせていただけではない。ディナーの1割以上の時間、スマホをいじっていたのだ。1通のメールに返信する、そのためだけに置いたはずなのに。