実際は、同じ長さだが8割が「上が長い」と勘違いするワケ

REVIEW

それでは、問題をレビューしましょう。まず【問題1】について、皆さんの回答をお聞きします。「上が何cm」「下が何cm」と答えてください。

【A】上が3cm、下が2.5cm。
【B】上下ともに2.5cm。
【C】上が3.5cmで、下が2cm。
【D】上が2.5cmで、下が2cm。
【E】上が3cmで、下が2cm。
【F】上が1.7cm、下が1.5cm。
【G】上が2cm、下が1.5cm。
【H】上も下も1.7cm。

【岩澤】答えが真っ二つに分かれましたね。上のほうが長いと判断した人と、上も下も同じと答えた人がいます。どちらかに手を挙げてください。

上のほうが長いと答えた人?(80%が挙手)
上も下も同じだと答えた人?(20%が挙手)

【図表1】赤ちゃんと二つの馬のおもちゃ
出所=『ケースメソッドMBA実況中継 04行動経済学』

「同じ長さ」と答えた人は変わり者だが、正しい

上も下も同じだと答えた皆さん、皆さんは変わり者です(笑)。この変わり者の方たちにお聞きしましょう。なぜ同じだと判断をしたのか、理由を聞かせてください。

【I】遠近法で考えてしまいそうになりましたが、純粋におもちゃだけで判断すると、同じぐらいに見えます。

【岩澤】システム1を使うと、つい遠近法の見方が思い浮かんでしまう。だから遠近法を排除したということですね。

【J】上のおもちゃの弦の両端から上に補助線を引き、下のおもちゃの弦の両端から下に補助線をそれぞれ引いて、絵の外の空白に弦の幅と同じ線を引いて、写真の情報をすべてカットした状態でサイズを見比べると、同じ長さに見えました。

【岩澤】遠近法を排除するだけでなく、写真に写っている情報も排除したわけだ。さて、正解はどうでしょうか? 定規を持っている人、測ってみてください。

【K】上が1.7cm、下も1.7cmです。

【一同】おお!

【岩澤】多くの皆さんが「上のおもちゃのほうが長い」と判断した理由は遠近法の見方ですね。人間は写真を見るとき、普通は遠近法的な見方で見ます。それは写真の中の情報を三次元の情報として解釈しているということです。そうすると、どうしても上の馬のほうが遠いところにありますから、大きく見えるわけです。しかし私が皆さんに要求したのは、写真を三次元で解釈することではなく、写真上の馬の弦の長さを測るという、写真の情報を二次元で解釈する仕事だったのです。