約7万人のデータが示す、適切な睡眠時間
もっとも大規模なものに、18か国の子ども6万9544人分のデータセット(昼と夜の合計睡眠時間、夜に何回起きるか、お昼寝の回数など)を使って、子どもの睡眠に関する世界標準や、年齢ごとの平均的な睡眠時間を明らかにしたものがあります。
これを使って、年齢ごとに必要な睡眠時間を知ることができます。お子さんの睡眠パターンが標準に沿っているとして、同じ年齢の平均と比べて、夜の睡眠が短く、お昼寝が長い場合、少なくともその平均までは、お昼寝を短くしてもいいことがわかります。その短い時間しかお昼寝しない赤ちゃんが、ほかに何万人もいるのですから。
もしお子さんの睡眠時間が同年齢の標準より短い場合は、ひとつ上の年齢グループを目安としてください。お子さんの成長は進んでいて、必要とする睡眠時間も短いからです。目安とする合計睡眠時間が決まれば、お昼寝はグラフに表わされた時間以内に収めるようにしましょう。
お昼寝を短くすることで、簡単に、そして効果的に、夜の睡眠を改善することができます。その際に、標準から外れてしまわないかどうかを知ることのできるデータがあるのは、とても便利なことです。
NG行動②:泣いたらすぐにあやしに行く
赤ちゃんと添い寝をするか、ベビーベッドに寝かせるか――子育て中の親のあいだで、よく話題にのぼるテーマです。
安全性の観点で言えば、米国小児学会は、SIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクから添い寝に反対しています。さらに、赤ちゃんがひとりで眠るスペースを確保することは、一晩中ぐっすり眠ることにつながるという調査結果があります。
2017年、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者たちは、親と添い寝している赤ちゃんと、ベビーベッドで寝ている赤ちゃんとを比較して、映像の分析と睡眠の記録を調査しました。すると、赤ちゃんと添い寝している親は、夜泣きがはじまると数秒で反応し、すぐに授乳していたのに対し、ベビーベッドに赤ちゃんを寝かせている親は、授乳するまで1分以上かかっていました。
ところが、意外にも、生後3か月の時点で、夜に5時間以上つづけて眠る赤ちゃんの割合は、添い寝しているグループでは25%だったのに対し、ベビーベッドのグループでは72%でした。夜泣きがはじまってから赤ちゃんをあやして授乳するまで1分以上かかっているにもかかわらず、親と別に寝ている赤ちゃんのほうが、長く眠っていました。
つまり、たった1分少々授乳を遅らせるだけで、赤ちゃんの寝つきはずっとよくなるのです。わたしは、寝かしつけ教室の参加者に対して、「90秒待ち」を指導するようにしています。