50歳を過ぎると、社内で「あれ、どうだった?」「あれって、何?」。
「だから、あれだよ、あれ」というようなやりとりが急に多くなる。オレも年をとったなあ、と諦め気味の人も多いのではないだろうか。しかし、脳は鍛え方によっては、いくつになっても若々しく保つことができる。
「脳トレ」ブームで一躍脚光を浴びた気鋭の脳科学者である。諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授は、脳の良しあしをこう説明する。
「脳は一種の記憶装置です。そこに蓄積されている情報は、経験を重ねれば重ねるほど多くなります。いわばコンピュータのデータベースのようなものです。その意味では、30歳より50歳のほうが、50歳より70歳のほうが、じつは豊富な情報を蓄積している“良い脳”だといえるのです。
ただ、そこで問題になるのは、年をとると蓄積した情報や知識をうまく引き出したり、組み合わせたりする力が弱くなります。これをトレーニングによって、うまく引き出せるようにしようというのが脳トレです」
ちまたではゲーム機やドリル形式の書籍を中心に「脳トレ」が空前の大ブーム。しかし、この手のものに頼らなくても、普段の生活をちょっと気をつけるだけで脳は活性化するという。
スウェーデンのカロリンスカ研究所が、認知症に関する興味深い研究データを発表している。これは1409人の中年男女を対象にした20年にわたる追跡調査で、認知症を発症させるリスク要因にどんなものがあるかがわかってきた。簡単にいえば、どんな人がボケやすいかということだ。
「年齢では47歳を境に物忘れが多くなり、20年後に認知症を発症するリスクが高くなります。性別では女性よりも男性のほうがリスクが高い。さらに教育を受けた年数が10年に満たない人、あまり活発に運動をしない人で20年後のリスクが高くなりました。やはり頭は使ったほうがいいし、運動をしたほうがボケにくいようです。
さらに注目すべきデータが、最高血圧が14mmHg以上、総コレステロール値が25mg/dl以上、肥満指数が30以上のいずれかであれば、その発症のリスクは高まり、これが複数重なると、さらにリスクが高まることがわかったのです」(篠原教授)