以上の研究データからもわかるように、つまりメタボリック症候群は認知症のリスク因子になるということ。最近、物忘れがひどくなってきたかなと感じたら、まずは食事に気をつかい、適度な運動を心がけてメタボリックや生活習慣病を予防することが肝心だ。

脳トレといえば、言葉や数字をあやつる知的な作業ばかりを思い浮かべるかもしれないが、それと同じかそれ以上に脳を活性化させるのが、体全体を使った運動だ。

高血圧で肥満体の人が認知症発症リスクが高いということは、「メタボ対策」こそがボケ防止に繋がるということだ。まずはインターバル速歩から始めたい。

高血圧で肥満体の人が認知症発症リスクが高いということは、「メタボ対策」こそがボケ防止に繋がるということだ。まずはインターバル速歩から始めたい。

カナダで実施された調査によれば、認知症285人を含む高齢者4000人を対象に、運動習慣とアルツハイマー型認知症との関係を調べたところ、ウオーキング程度の運動を週3回以上行っている人は、運動習慣のない人に比べ、アルツハイマー型認知症を発症する危険度が極端に低いという。

「もともと脳みそも体の一部なんです。若いころは、体と脳みそは別々だといってもいいくらいにそれほど関係は深くない。でも、年をとればとるほどその関係が密接になって、身体機能が衰えれば、脳みそも確実に鈍くなってきます。だから、年をとってからの脳の活性化には、運動で体を鍛えるのがいちばん効果があります」(篠原教授)

ただ歩くだけでも脳の活性化になるが、なかでもより効果的な運動として篠原教授がすすめるのがインターバル速歩というもの。やり方はとても簡単で、まず3分間、ふだんのペースで歩く。3分が過ぎたら、次の3分間は速歩き。この「ふだん歩き」と「速歩き」を3分間ずつ交互に繰り返すだけ。緩急をつけて行うウオーキングが、脳の活性化にはとても有効だ。

「インターバル速歩は脳トレだけでなく、じつは筋トレにも効果絶大です。ふだんの歩きをいくら続けても筋力アップはあまり望めませんが、インターバル速歩を1年続ければ、およそ10%も筋力がアップするという研究データも出ています。ふつう大人の筋力は1年で1%ずつ落ちていくといわれますから、インターバル速歩を1年間続ければ、筋力が10年若返るということになります」(篠原教授)

年をとるほど脳と体は密接に関係してくる。その論理でいえば、体を鍛えることで、脳も10年若返るはず。

(撮影=飯田安国)