目指しているのは「壊れる前に直す」こと
「世間のみなさんがお持ちの保全のイメージとは、機械が壊れたら直す、復帰させるといったことだと思われますが、しかしですね……」
そうか。それだけではないのだなと受け取ったら、高橋はまじめな顔で続けた。
「私たちもその通りだと思っております。当然、そういったことを行っておりますから」
「ですが、一秒でも早く復帰させて、とにかく同じ故障が起きないよう、再発防止をするわけです。なんといっても私たちが目指しているのは、壊れる前に直すこと。そのために製造、技術とタッグを組み、日々、自主保全活動を行っております」
故障を早く直すこと、壊れる前に機械の調子を見るにはプロの目と経験が必要だ。彼らはさまざまな技能検定に挑んで、資格を取る。そうすれば知識とスキルが増える。
彼らは機械が壊れるまで休憩室でカフェラテを飲んで待機しているわけではない。保全マンの一日に休息はない。順調に設備、機械が稼働している間は、予防保全・定期保全の準備や壊れない設備にする改善も進める。また、人財育成の教育や自学・自習も怠らない。教育を受けるか、自学自習している。
※この連載は『トヨタの危機管理』(プレジデント社)として2020年12月21日に刊行予定です。