第二の課題:巨額投資を賄う「財源」は確保できるか
第二の課題は「財源の確保」です。
11月14日、米大統領選で候補指名を固めた民主党のバイデン前副大統領は、4年間で計2兆ドル(約210兆円)を投資する環境政策を発表しました。
日本の投資額はこの原稿の執筆時点では明らかにされていませんが、アメリカに準ずるような大きな投資額になることでしょう。
英、独はじめEU各国は、早い国では1990年代から温暖化ガスの排出削減に向けた努力を開始し、2000年代からはEU全体での取り組みを加速させ、2010年には1990年比で20%近い削減を達成しています。さらに今年9月には、2030年に1990年比で40%減だった従来目標を55%減にする新たな目標を打ち出しました。
助走期間が足りない「日米の苦悩」
先行したEU各国には、10年から20年間の「助走期間」があって、いまそれを加速させようとしているのに対し、日米政府はこれまでいわば「足踏み」状態でしたから、30年後のゴールに向けて一気に加速するために、短期間で巨額な投資が必要になるのです。
しかし、言うまでもなく、足元ではコロナ対策への財源が必要となる中で、脱炭素社会へ向けた財源を手当てするのは容易なことではありません。今日、グリーン投資を加速するような優遇策や税制改正が与党の税制調査会でも議論されているようですが、おそらく近い将来、たとえば炭素税のような新たな税のありかたも含めた財源確保の議論が本格化されていくことになるでしょう。
日本版炭素税「地球温暖化対策のための税」の税収額
「脱炭素社会」へ向けた財源として、EUではすでに「炭素税」が導入されています。
「炭素税」とは、単純にいえば、化石燃料に含まれる炭素の排出量に応じて税金を負担してもらう仕組みです。あまり知られていないかもしれませんが、日本でも2012年から「地球温暖化対策のための税」という名称で炭素税が導入されています。税額はCO2排出1トン当たり289円です。
私たち生活者にいちばん身近なガソリンを例に挙げると、1リットル当たりの税額は約0.7円になります。ちなみに世界で最も高い税額を課しているスウェーデンの税額はCO2排出1トン当たり127ドルで、1ドル=105円で換算すると1万3335円となり、日本のおよそ46倍です。ガソリン1リットル当たり30円強の計算になります。
「地球温暖化対策のための税」の税収は日本では約2600億円程度とされ、今後、政府が温暖化対策を積極的に進めていく財源としてあてにするのであれば、税額の引き上げはおそらく不可避になることでしょう。