ユーロの時代は終わったのか?

――通貨に関する見通しは? 円高の先行きや、次世代の基軸通貨候補といわれたユーロについてはいかがでしょう。

反政府デモに揺れたエジプトをはじめ、中東の情勢不安がユーロなどの通貨に影響を与えています。日本が格下げされても円高が続いているのは中東の影響です。ユーロは、コンセプトとしてはすばらしかったのですが、残念ながら、経済ではなく政治的な通貨になってしまいました。社会不安は当分の間続くので、為替相場には気をつけたほうがいいでしょう。

中国、台湾、シンガポールなど、債権国がアジアに集中し、債務国は欧米に集まっていることも、通貨の混乱を招いています。食糧価格の高騰が世情不安を煽ることも考えられる。日本円や中国の人民元は持っておいたほうがいいですね。日本円、人民元に加えて、私はオーストラリアドル、カナダドルなど、政治的に安定した資源国の通貨にも投資しています。コンゴのように、資源は豊かでも政情が不安定な国の通貨は買いませんが。

――「21世紀は中国の時代」だとおっしゃっていますが、特に有望なのはどんな産業でしょう。
リーマンショック後に落ち込んだ原油価格も再び上昇を続ける。中東の混乱が収まらない限り、さらに高騰の可能性も。(PANA=写真)

リーマンショック後に落ち込んだ原油価格も再び上昇を続ける。中東の混乱が収まらない限り、さらに高騰の可能性も。(PANA=写真)

先ほどあげた水ビジネス、農業のほか、観光も非常に有望です。中国人は過去300年もの間、海外旅行をすることが難しかった。その13億の人たちが海外に出るようになるのです。

80年頃、突然、ニューヨークの街に日本人観光客がどっと押し寄せたことを思い出しますね。同じことが、日本の10倍以上の数の中国人に起こりつつある。彼らの姿を世界中で見かけることになるでしょう。金持ちになりたければ、農家になるか、もしくは中国語のツアーガイドになるのもいいと思いますよ。(シュガーポットから角砂糖をつまみ出して)さあ、食糧危機に備えて、あなたもこの砂糖を持って帰るべき。砂糖がさらに値上がりしたら、喫茶店のテーブルから砂糖が消える日が来るかもしれませんからね!

※すべて雑誌掲載当時

(澁谷高晴=撮影 PANA=写真)