6年間引きこもりが続く46歳の兄
「北海道の42歳の男性は、4歳年上の独身の兄がいる。兄は大学を卒業して会社勤めをした後に、独立したがうまくいかず、いまは71歳の母が住む実家で6年間引きこもりが続いている。母と兄の生活費は、亡くなった父の遺族年金の月8万円ほど。母からは生活に困っていると訴えられ、子どもと共に帰省するたび生活費を渡し、一方で兄からも頼まれ10万円を貸したままだという」(北海道新聞、2018年8月2日朝刊、「『きょうだいリスク』を考える 兄弟姉妹の将来が不安 希薄な家族関係 親の年金頼りに」)。こうした問題やケースを知って、「一人っ子でよかった」と思う人もいるとのことだ。
もっとも、このような困難を抱えるなかでも、「これまで家族としてともに生きてきたのだから、親やきょうだいを支えたい、守りたい」と考える人は多い。実際に、前述の北海道の男性は、ひきこもりの兄を「『その時』になったら助けてしまうかもしれない」といっている。
できる範囲で家族を助けていくことは、一つの手ではあるだろう。しかし、より重要なのは、就職氷河期世代への支援を通じて彼ら/彼女らの経済的・社会的自立を進めることで、同世代本人が身を置く厳しい状況ときょうだいなどへの困難の連鎖のいずれも解消していくことである。
現役時代の負担は2050年代にかけてピークに
団塊ジュニア以降の世代の人口が細る状況下、一方高齢の就職氷河期世代を支えることに関して、よりマクロの視点からみてみよう。就職氷河期世代を支える足許の現役世代の人口は少なく、将来世代も人口ボリュームがますます細っていく。この点から考えても問題はより深刻である。
現役世代が高齢者や年少者をどの程度支えているかを比率で表す従属人口指数は、40%強だった1990年代前半以降上昇が続き、足許は70%弱まで高まっている(図表2)。
つまり、かつては、10人の現役世代が4人の子ども・高齢者を支えていたが、それがいまは、10人の現役世代で7人の子ども・高齢者を支えなければならない状況に変わったということだ。そして、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」などを基に先行きを見通すと、就職氷河期世代の年長者である団塊ジュニア世代の、65歳の老年人口入りが迫る2030年代半ば頃から、従属人口指数は上昇ペースが加速し、2050年代にかけてピークを迎えると見込まれている。その間、就職氷河期世代が自身の高齢化により生じる問題などもあって、社会保障費歳出の膨張圧力や、財政の悪化圧力は高まる恐れがある。