「肉を食べることは時代遅れの慣習だと思う」
そしてなにより、先に書いたオーツミルクをはじめとした人々の食生活が、目に見えるかたちで変わってきている。16歳以上のオランダ人を対象としたStichting Natuur en Milieu(自然と環境基金)の2019年の調査によると、ベジタリアンとヴィーガン(完全菜食主義者)の割合は全体の5%と日本とほぼ変わらない比率だったが、ベジタリアンでない人々の意識が大きく変わっていることが明らかになった。
全体の59%である「普段から肉を食べる」という人のうち、約8割は「4年前にくらべ、食べる肉の量が減った」と回答した。その理由としては「肉を食べることは時代遅れの慣習だと思う」という回答が多く挙がった。肉を意識的に減らしている「フレキシタリアン(セミ・ベジタリアン)」の割合が37%というのは、端的にその意識の表れであろう。
そんな状況を受けてか、アムステルダムの街はベジタリアンやヴィーガンにとても優しい。ベジタリアン・ヴィーガンレストランは年々数を増やしているし、そうでないレストランに行っても「*vegan」「*vegetarian」の表記がメニューに丁寧に付け加えられている。ラーメン屋にもヴィーガンラーメンが必ずあるし、ヴィーガンパンケーキ屋も大人気だ。
「ヌード・バーガー」から「ヴァージン・バーガー」へ
街の景色も目まぐるしいほどのスピードで変わってきている。先月は家の近所にあったしゃれたハンバーガー屋「ヌード・バーガー」がその看板を下ろした。そしてそこに新しくオープンするのが、何を隠そう、ヴィーガンバーガー屋である。「ヴァージン・バーガー」という名前らしい。ポップな文字で「100% Plant-Based!(100%植物性!)」と書かれている。ヌードからヴァージンへ……今は工事中なので確認できないがネーミングセンスからして同じオーナーかと思うので、コロナで潰れたわけではなく、ビジネスを考えた上での方向転換なのかもしれない。
では、なぜここまで菜食主義者の割合が増えているのか。菜食主義になる理由は、①味が好き、②アニマルライツの尊重、③健康の維持・向上、④環境配慮と大きく4つある。この中で今は、④環境への配慮という意識の高まりにより、ヨーロッパやアメリカを中心に大きな波を起こしている。
畜産業界による温室効果ガスの排出量は、全体の14.5%。先に挙げたファッション業界も10%と高いのだがそれを上回り、さらには個人の車や飛行機、電車や輸送用の船などを含めた世界中すべての交通機関を合わせた14%よりも高い。言い換えればそれほど環境におよぼす影響力が強い。