歌舞伎の醍醐味である歓声や掛け声も禁止

会期中には政府から100%の観客収容を許可されていたが、当初予定通り50%にとどめた。さらに、開演中においても客席扉を開放したまま上演することで、会場が「密」にならないよう配慮した。

公演中は歓声や掛け声を禁止し、拍手のみにとどめるよう観客に要請。大向こうと呼ばれる歓声は、歌舞伎の醍醐味でもある。それでも「絶対に感染報告を出さない」という決意から、異例のルールを設け、徹底した。

万が一、感染が発覚した場合には、来場者全員に感染者が発生したことを通知できる仕組みも構築した。アンケートだけでなく、スマホアプリを活用することで、個人情報を収集せずにメッセージを送れる体制を整えた。

演目にもこだわった。写真は、コロナからの回復を祈念し舞った『寿式三番叟』
撮影=平松真帆
演目にもこだわった。写真は、コロナからの回復を祈念し舞った『寿式三番叟』

歌舞伎という伝統芸能を絶やさないという決意と危機感

こうした様々な努力が実り、10月29日、神奈川県・小田原市民会館で無事に千穐楽を迎えた。観客、スタッフ、主催者から一人の感染報告も出すことなく、49日間を駆け抜けた。

また、同時期には「伝統芸能 華の舞」の巡業も企画。一門の活躍の場を広げることにも尽力した。2つの巡業公演を合わせると全国21カ所42回もの公演をコロナ禍で成功させている。

海老蔵氏の一連の取り組みの背景には、日本の劇場文化、そして歌舞伎という伝統芸能を絶やさないという決意と危機感があった。11月27日(金)発売の雑誌『プレジデント』では、海老蔵氏の独占インタビューを掲載。「できればみんなと同じことをしたい」と語りながらも、独自の行動を起こしてきた理由を語っている。

(構成=プレジデント編集部 撮影=平松真帆)
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