旅巡業で自分たちがウイルスを撒くことがないように

検討を始めた後も、様々なイベントの中止が決定されていく。エンターテインメント界全体が、全国ツアーを開催していいか悩んでいた。海老蔵氏は自らを実験台に、巡業を成功させるための方法を模索した。

「コロナ禍の中で旅巡業して、もし自分たちがウイルスを撒いたら問題外なので、とにかくコロナに罹らないということにフォーカスしました。一回数万円はかかるPCR検査も、キャスト、スタッフおよそ70人全員が2回ずつ行っています」

それ以外にも、様々な感染予防対策を実施した。まず、全国を旅する出演者やスタッフ一行を、各地域の主催者や観客から隔離した。通常の公演であれば、主催者側が楽屋に挨拶へ行くものだが、これは一切禁止。熱心な観客、支援者である贔屓筋との会食はもちろんのこと、公演当日の花束やプレゼントの受け取りまで断る徹底ぶりだった。

主催者側のスタッフと観客の接触も最小限に

マスクの着用と検温、消毒などは、稽古や移動など、すべての場面で欠かさず行った。宿泊地では出演者やスタッフ同士であっても5名以上での会食を禁止、外食も避けるようガイドラインを示すなど、感染対策を巡業先で徹底した。

主催者側に求めた観客への感染予防対策も多岐にわたる。手の消毒と非接触型の検温、マスクの着用を求めるだけでなく、全公演で靴裏用の消毒マットと消毒液を手配し、入場時には靴裏まで消毒を行った。

また、入場時のチケットのもぎりを観客自身に行ってもらう、物販はとりやめプログラムは無料で配布、配布物は袋の持ち手を触らず渡すなど、細部に至るまでルールを設け、主催者側のスタッフと観客の接触も最小限に抑えた。

会場では手のひらだけでなく靴の裏まで消毒を実施した。
撮影=平松真帆
会場では手のひらだけでなく靴の裏まで消毒を実施した。