知識人バイアス……専門家は楽観論を口にしない

予想をゆがめるもう一つの構造的な要因が「知識人バイアス」です。

「専門家」たちは一般的に知識人と思われている人種です。そのような「知的な専門家」は楽観的な断言をさけ、悲観的な懐疑を口にしがちです。なぜなら大衆から「バカ」だと思われたくないからです。

世の中を懐疑的にみて、慎重論を述べている方が「賢そう」に見えるので、例えば現在のような好調な株式相場をみるとほとんどの専門家が「バブルの可能性」だとか「慎重になった方がいい」などと口にするのです。私はそのような人たちの予想が当たったのを見たことがありません。

これは日曜日の朝の情報番組を観ていても思い当たるでしょう。地政学問題、コロナ問題、社会情勢……すべての問題において、コメンテーターたちがしかめ面で問題をほじくり出し、「困った、困った」と言っています。そのほうが賢そうに見えるからです。盛り上げ役のはずのお笑い芸人までしかめ面をしているのは、まさに噴飯モノです。

彼らは、同じことを言うのでも悲観的な言い回しを用います。例えば「新型コロナは3年後に収束する」と言うより「3年間は収束しない」という表現を使います。これは、コップに半分水が入っていることを「半分しか水が入っていない」という表現をするのと同じです。そんな彼らが唯一ポジティブなコメントを出せるのが、ひいきのチームが勝った日のスポーツコーナーなのです。

「相場は2割の人しか勝たない」ようにできている

以上のように、専門家の予想は構造的に当たらない、むしろ外れるようなバイアスがかかっています。予想が単なる確率論であれば、予想の正誤は50%の確率となるはずなのですが、このようなバイアスが構造的に存在するとすれば半分以上の確率で間違うということになります。これはこれで利用することが可能です。

相場の世界では、「あの人が強気になったら、そろそろ相場も終わりだね」とか、「あの人がポジションを投げたら(売却したら)、そろそろ買わなくちゃ」みたいな、いつも間違える人がいるものです。このような「ネガティブ・インディケーター」を見つけた場合は、大いに参考にすればいいでしょう。もちろん逆方向に、ですよ。

ノートパソコンで株価チャートをチェックする男性
写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM
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先述のように、「専門家」の予想は構造的に外れるバイアスが働くうえに、中短期の相場という特殊な場所ではその傾向がより鮮明になります。なぜなら、「相場は2割の人しか勝たない」ようにできているからです。中短期で証券を売買する相場はいわばギャンブルのようなもので、「誰かが勝つときは誰かが負けている」構造です。

そのようなゼロサムゲームにおいては、大多数の人が勝つことはありえず、大多数の屍の上に2割の勝者が成立しています。大多数の人が「買いだ」と言って、強気相場の「熱狂的陶酔感(ユーフォリア)」に浸っているタイミングこそが、絶好の「売り」タイミングなのです。