11月17日、日経平均株価の終値が29年ぶりに2万6000円を上回った。いまは株の買い時なのだろうか。農林中金バリューインベストメンツ最高投資責任者の奥野一成氏は「短期的な株価の動きに一喜一憂したり、専門家の予想を当てに投資したりしてはいけない。投資は長期で考えたほうがいい」という——。

専門家も、証券会社も市場予想はできない

先日、米国大統領選がおわり、バイデン氏の当選確実が報じられました。折しも新型コロナウイルスのワクチン開発報道とも相まって、日経平均株価は先月末から13.2%、S&P500指数は10.4%上昇しました(11月17日時点)。

2万6000円台になった日経平均株価を示すボード=2020年11月17日午前、東京都中央区
2万6000円台になった日経平均株価を示すボード=2020年11月17日午前、東京都中央区(写真=時事通信フォト)

この1カ月余り、経済ニュース番組やWEBセミナーなどには、毎日のように証券会社等から「専門家」が登場し、大統領選の行方とその後の相場予想に弁舌をふるっていました。4年前にも8年前にも繰り返された光景です。皆さんの中にも、それらにしたがって株式の売買をした人も多いのではないでしょうか。

結果は悲喜こもごもだと思いますが、証券会社の相場予想を聞いて投資行動をとることは、はっきり言って危険です。なぜなら証券会社は顧客に株式を売買してもらうことをなりわいとしているので、相場にポジティブな予想をするバイアスがあるからです。

このことはアカデミックな研究でも報告されています。株式を売買させることで儲けている人から相場予想を聞くことは、散髪屋に入って髪を切るべきかと聞くのと同じことなのです。

そもそも予想はあたりません。4年前の大統領選を思い出してみましょう。オバマから引き継いだヒラリー・クリントンが圧倒的に優勢と言われる中、セクハラ、パワハラ、人種差別なんでもありのトランプが勝つと予想していた人はほとんどいませんでした。(私の手元にある当時のリポートによると、11名の専門家が90%以上の確率、または大差でクリントンが勝つと予想しており、トランプが勝つと予想している人は1人もいません)