座学だけではリーダーは育たない

——課外授業が非常に充実していますが、これにはどのような意図がありますか。

【マイケル氏】課外授業活動を通じてさまざまな経験を積むことは、リーダーになるために必要不可欠だからです。人生は常に順調とは限りません。良い教育とは、生徒が困難に直面しても、生き抜くことができる教育だと考えています。そのためには挑戦や失敗をする経験が不可欠で、座学だけでは良きリーダーは育めないと考えています。

ハロウインターナショナルスクールバンコクの課外授業活動の様子
写真提供=ハロウインターナショナルスクールバンコク校
ハロウインターナショナルスクールバンコク校の課外授業活動の様子

ひとつの例として、ボランティア活動を通じた「リーダーシップサービスプログラム」の話をしたいと思います。

ハロウインターナショナルスクールバンコク校のある女子生徒は、観光客が多く訪れるタイでは有名な山にもかかわらず、観光客が立ち止まる施設もなければ、電気などの設備も不十分で、夜は子供たちが焚火の煙の中で勉強するような環境のため、村以外の人を引き付けることができていなかった、ある村のためにプロジェクトを始めました。

自分たちが普段知っているものとは全く異なる環境に置かれたからこそ、生徒が考えた方法は大変クリエーティブで、かつ、サステイナブルな方法でした。山から草木を切る、土を集め自分たちで踏んで混ぜて粘土を作るところから始めたのです。村の人たちと協働し、関係性を築き、2つの建物を建てていきました。

3年後、建物は完成し、鍵を村長にプレゼントしました。その後、これまで立ち止まりもしなかった観光客がその建物を中心に立ち寄るようになり、村に新たな収入が生まれ、雇用も創出できたのです。

ハロウスクールは約450年前に、もともとエリートや富裕層のための学校としてではなく、若い青年たちが、郊外の自然豊かな環境で精神的にも身体的にも健康に成長し、リーダーとしての教養と精神を身に付け、コミュニティへ貢献できる人材を育てるための学校として生まれました。その精神は今も生きているのです。

日本には創造性の教育が足りない

——日本では2020年に学習指導要領を変更し、生徒中心のアクティブな学びを増やしていこうとしています。しかし、まだまだ座学が中心で、ハロウのような課外授業も不足しているように感じます。日本の教育については、どのように思われていますか?

【マイケル氏】私は2003年から6年ほど日本にいたので、日本の教育者と交流があり、日本の教育の素晴らしい点も知っています。たとえば、実用的な知識を授けることにはたけています。

ただ、創造性や、ゼロから物を作り出すマインドセットを育てる仕組みは足りないと感じます。