主力の四日市工場で2022年春までに新工場棟を建設
経営危機に陥った東芝から分社化、独立した半導体大手のキオクシア(旧東芝メモリ)は、フラッシュメモリーの生産増強に向け、国内で総額1兆円規模に上る巨額投資で新工場建設に乗り出す。
純粋持ち株会社のキオクシアホールディングス(HD)が大口取引先である中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に対するトランプ米政権による輸出取引規制から、10月に予定していた東京証券取引所への新規株式公開(IPO)を延期した直後の決断だった。
資金調達が制約される状況下での巨額投資は、NAND型フラッシュメモリーで世界第2位の座の死守に向けて血眼なキオクシアの意地がにじむ。同時に、攻め時を逸してはならないとの大きな賭けの要素もはらむ。
キオクシアが10月29日に発表した計画によれば、主力の四日市工場(三重県四日市市)に2021年春に新工場棟の1期分の建設に着手し、2022年春の完成を目指す。市場動向を踏まえ2期分も建設する計画で、1兆円規模に達する投資額を同社は「営業キャッシュフローの範囲内」で賄うとする。
「機動的な設備投資判断の有無がその後の優劣を決する」
巨額投資に打って出るのは、世界中が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に直面しながらも半導体を巡る市場環境は持続的な成長が予想されるからだ。
クラウドサービスや次世代通信規格「5G」向け、さらにIoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)、自動運転車の技術進展などフラッシュメモリーに対する需要は今後も旺盛で、このタイミングで最先端フラッシュメモリーの生産を強化し、需要を取り込もうという狙いだ。
半導体産業には「機動的な設備投資判断の有無がその後の優劣を決する」との定説がある。これに従って、キオクシアは株式上場の延期により資金調達面での制約が発生した中でも市場拡大期に出遅れては後がなく、巨額投資に踏み切った。
そこには、ここが勝機と攻めに出て、是が非でも世界2位の座を維持したいという本音が透けてくる。