現在の性風俗店の約7割は「無店舗型」
以前、救急医の友人から、「風俗の女性が客に酒の瓶で殴られたって来たんだけど、どういうことなの? どうなってるの? なんでスタッフの男の人普通に付き添ってるの? 殴られる前にどうにかしないの?」と訊かれたことがあります。
法律上、パチンコや水商売、性風俗は全て「風俗営業法」の中にあります。一般に「風俗」と呼ばれる、女性店員が男性の客に性的なサービスをする仕事はその中で「性風俗関連特殊営業」に該当し、営業のためには届け出が必要です。
性風俗店には大きく分けて、店舗型と無店舗型があります(*4)。店舗型は多くの方が歓楽街などで見たことのある、ソープランドやファッションヘルスといった形態となります。一方無店舗型は、事務所(多くは雑居ビルなどの一室)でスタッフが客からの電話を受け、客が指定した自宅やホテルに女性店員を派遣するもので、主にデリバリーヘルスと呼ばれます。
1999年の風営法改正に伴い、店舗型性風俗店は建築基準や営業時間などの制限が厳しくなり減少しました。それに伴い、比較的規制が緩い無店舗型性風俗店は今も増加傾向にあります。現在の性風俗店の約7割はこの無店舗型性風俗店です。
2018年に群馬県のホテルで客の男に切り付けられたのは、デリバリーヘルス勤務の女性でした。前年、池袋のホテルでも、デリバリーヘルス勤務の女性が客の男に殴られ、現金を強奪される事件が起きています。(*5)
「すぐ逃げられない状況」が被害を増やしている
店舗型性風俗店では、呼べば届く距離に男性スタッフがいますが、無店舗型はそうではありません。客が先にホテルに入っている、もしくは客の自宅に行く業態では暴力や盗撮といった事態が後を絶たず、働いている女性が常に危険に晒されているのが現状です。
さらに昨今のラブホテルのドアは手動ロックではなく、部屋に入った途端に鍵が自動でロックされ、部屋の入り口に設置されている会計システムにお金を入れて会計を済まさなければ開錠されないシステムとなっています。
被害に遭いそうになってもすぐに逃げられない状況が作られていることも、被害を増やす要因のひとつになっていると考えられます。
救急医の友人にこの話をすると唖然としていました。「客がやばい人で、刃物とか持ってたら殺されるよね? スタッフさんに連絡するスマホ取り上げられたり壊されたりしたら終わりじゃない? そんなに怖い思いをした後での受診だったなんて……よく分からなくて縫合だけして帰しちゃった。知っていれば精神科コンサルとか、警察呼ぶとか、できたはずなのに」という言葉が出てきたことにはほっとしました。
しかし、「そんな場所で働いてるなんて可哀想だよね。好きでもない男とセックスしてさ。セックスは愛してる人として欲しい。いや好きでその仕事してるなら別にいいんだけど」という言葉が続いたことに、私は違和感を覚ました。