医大生の女性率4割時代の中で女子医大はどう生き延びるのか

先に触れた2018年の東京医大を中心とした「女性受験者の減点」の騒動後、2019年度入試からは大規模な得点操作は事実上不可能になった。これにより、医学部の合格者に占める女性率は前年の34.7%から37.2%に急増した。医師の卵の4割は女性なのだ。

最近は有名女性の「医学部再入学」も目立つ。例えば、2016年に医大入学した元NHK気象予報士の小島亜輝子氏(36)、2019年に編入学したNHKアナウンサーの島津有理子氏(46)、2020年に入学した柔道家の朝比奈沙羅氏(24)などは他大を卒業した後に、医学部に入りなおしている。高学力女性の医学部進学ブームは衰えを見せず、今後もさらなる増加が予想されており、女子医大のような「女性のみ医大」の存在意義は薄れつつある。

日本人の女性医師
写真=iStock.com/Shoko Shimabukuro
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女子医大出身者に「ゆるふわ女医」が目立つワケ

女子医大出身者には、元準ミス日本の友利新氏、ワイドショーコメンテーターのおおたわ史絵氏、パリから美容情報を発信する岩本麻奈氏などメディア露出の多いタレント女医が多い印象がある。

医師としてキチンと仕事をしていればいいのだが、中には問題がある人もいる。セクシー女医として派手な私生活をテレビで公表していた脇坂英理子氏は、2016年に診療報酬不正請求で詐欺罪に問われ、一時、医師免許停止処分された。この騒動は、同大のブランドイメージを一層低下させることになった。

私見だが、昭和時代の女子医大卒業者は創立者の意思を受け継いで「女性の地位向上」に貢献した女傑が多かったが、平成の「タレント女医」出現と期を同じくして、どこか地に足のついていない「ゆるふわ女医」が増加したように感じる。

「医師スキルを磨くよりも、男性医師との婚活に励み、結婚出産後は昼間のローリスクな仕事(命にかかわらない診療科)を短時間だけする」「当直・手術・救急・地方勤務は一切いたしません」タイプの女性医師である。

このような、命を預けるには心もとない「ゆるふわ女医」は最近全体的に増えているが、「女子医大出身者に目立つ」と指摘するのは筆者だけでない。

近年の若手医師は男女とも「ワークライフバランス重視派」が増えており、東大などの名門外科医局などでも人手不足で、「研修医へのパワハラ」が発覚すると上司が処分されかねない時代となった。地方医大出身者が東大病院に就職しても前出・木下医師のような艱難辛苦に耐える必要はなくなったので、男性医師が女子医大付属病院に就職するメリットも低下した。そうした社会背景も、女子医大の存在感を押し下げているのかもしれない。