男性同期が次々昇進する中で、一大決断
しかし、40歳が近づくにつれて自分のキャリアに悩み始める。仕事にも慣れてそこそこ楽にこなせるようになり、成長を感じることが少なくなった。しかも男性の同期が次々と幹部になっていく中、自分はまだ一社員のまま。
「私の行き先はどこなんだろう、この先どう成長していけばいいんだろうってモヤモヤし始めたんです。この状況を変えたほうがいいと思って、一時は転職も考えました」
当時はまだ男性社会の側面が強く、昇進も男性が優先。管理職試験はあったが、受験するには上司の推薦や一定の条件が必要で、同じ部署・同じ年齢なら男性が先に受験するのが当たり前だった。不平等だと感じても、長年の慣習はすぐには壊せない。鈴木さんが行き詰まったのも当然と言えるだろう。
だがここで、上司に「機会があれば受験してみたい」と伝えたのが功を奏した。上司が昇進試験に推薦してくれたのだ。とはいえ、心の底ではそれほど昇進したかったわけではなく、管理職になったら責任も重くなるし、人の育成も大変そう、という消極的な思いもあった。
それでも、モヤモヤした現状を打破するには昇進、異動、転職しかない。広報の仕事は好きだったため異動は考えられず、残る選択肢は昇進か転職だけだった。
非上場の記者発表で会社の最前線に立つ
41歳の時、管理職試験に合格して昇進。周囲に認められたことで、昇進前に感じていた悩みはある程度晴れたが、今度は管理職ならではの悩みがつきまとう。社内調整にかかる気苦労、部下を持つことの大変さ、このままこの会社で幹部として生きていくのかという迷い。鈴木さんは、またしてもモヤモヤ期に突入したのだった。
それが晴れたのは44歳の時。会社が株式の非上場(経営陣と従業員による自社株取得)を決め、鈴木さんは広報としてこの大きな経営判断の記者発表を担当することになった。
「非上場」という衝撃的な内容だけに、ネガティブな伝え方をすれば会社のイメージを損ないかねない。これまでにない緊張感の中、育ててくれた人たちの言葉を思い返しながら、夜を徹して準備に取り組んだという。
「この難題を乗り越えたことが大きな自信になりました。会社の最前線に立つことでこんなに自信がつくんだと気づくと同時に、チームワークの重要性も体感できました。これをきっかけに、将来は私がサンスターの広報部を引っ張っていきたいと心に決めたんです」