免疫で重要な働きをする「サイトカイン」とは
免疫とは、外から体内に侵入してきた異物を認識し、排除する生体防御システムです。
例えば、ウイルスなどの病原体が粘膜に感染して、体内に侵入してしまったら、まず好中球やマクロファージなどの免疫細胞が立ち向かいます(自然免疫)。マクロファージは病原体を飲み込むと同時に、その情報をT細胞に伝えます。情報を受け取ったT細胞は、攻撃部隊にウイルスを排除するように指令を出し、この指令を受け取ったキラーT細胞がウイルスに感染した細胞を破壊します。また、指令を受けたB細胞では、そのウイルスに対抗する特定の抗体を作り出します(獲得免疫)。
このようにさまざまな細胞が協力してウイルスに感染した細胞を排除するのが免疫のシステムです(図表1)。
実際にはもう少し複雑に、さまざまな種類の細胞や代謝物が機能して、病原体に対抗するだけでなく、逆に免疫細胞が過剰に働いてしまう場合はそれを抑える働きが機能したりすることで、体をちょうどよい状態に整えています。
そして、このような免疫細胞の活性化や機能抑制には、「サイトカイン」(細胞から出るタンパク質)が重要な役割を担っています。
サイトカインストームが死につながる病気を引き起こす
サイトカインにはさまざまな種類がありますが、なかでも炎症を引き起こすものを「炎症性サイトカイン」、炎症を抑えるものを「抗炎症性サイトカイン」と呼びます。「炎症性サイトカイン」の血中濃度が高くなると炎症が強まり、血圧が上がったり、血管を傷つけることで血栓を作り、心筋梗塞や脳梗塞につながったりします。
さらに炎症が強くなれば、正常な細胞・組織が崩壊され、多臓器不全に陥り、命を落とすこともあります。このような免疫の暴走状態により、炎症細胞が全身の臓器に損傷を与える悪循環を「サイトカインストーム」と呼びます。
ウイルスは自分の細胞を持ちませんから、人や動物などの細胞に入り込むことで増殖しようとします。その過程で、ウイルスを排除しようとして免疫が反応し、大量のサイトカインが産生されます。その結果、一定の炎症反応が現れるのは想定内なのですが、これに対して、ビタミンDが十分にあれば、炎症を抑える作用が期待できます。
このときビタミンDが足りなければ、どのような事態に陥るかは容易に想像がつきます。また、感染防御の過程でマクロファージ自身が、カルシジオールから活性型ビタミンであるカルシトリオールを作り出すということも突き止められています。自分で作り出さなければならないほど、ビタミンDが免疫調整において重要な役割を担っている物質であることを物語っています。