景気の先行きが暗いのに、株価はコロナ前の水準

新型コロナウイルスがなかなか終息せず、景気の先行き不安が増す中で、ひとり株価は堅調に推移している。日経平均株価は3月19日に1万6552円まで下げたものの、その後は急速に戻り、10月には2万3000円台と、ほぼ新型コロナ前の水準に戻っている。

景気の先行きが暗いのに、なぜ株価はしっかりしているのか。

日本を含む世界の中央銀行が新型コロナによる経済対策として、大幅な金融緩和に乗り出しており、世界的な「カネ余り」状態になっていること。ひとり10万円の定額給付金が支給され、とりあえず手元資金が増えた個人が株式購入に乗り出したことなどが原因とされるが、日本の場合、ひとつ特殊な事情がある。

2020年10月2日、東京証券取引所
写真=時事通信フォト
2020年10月2日、東京証券取引所

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が年金資産の運用のために「日本株」の購入を大幅に増やしているほか、金融緩和の一環として日本銀行が株式を投資対象とするETF(上場投資信託)の購入を拡大するなど、「公的資金」が株式市場に流れ込んでいるのだ。

すでにGPIFは2020年3月末で35兆5630億円の国内株式を保有している。公的機関は信用力の高い東京証券取引所市場1部銘柄しか原則買わない。この東証1部の時価総額は530兆6121億円だったので、東証1部企業の株式の6.7%を保有していることになる。

日本銀行とGPIFの株式購入が増え続けている

一方の日本銀行は3月末でETFを通じて31兆2203億円の株式を実質保有している。こちらは5.9%相当だ。この2つを足すと、東証1部上場企業のなんと12.6%が「公的資金」によって保有されている。

しかも、両者の株式購入は新型コロナの蔓延以降も、増え続けている。GPIFによる国内株の購入は全資産の25%という目安が設定されており、運用する年金資産が増えれば自動的に国内株の保有が増えていく。株価の上昇もあり、6月末の保有額は40兆333億円と40兆円を突破、時価総額588兆3504億円の、6.8%に達した。

さらに凄まじいのが日本銀行によるETF購入だ。新型コロナ対策の金融緩和の一環としてETF購入を「年最大12兆円」に拡大したことから、4月以降10月までで、すでに3兆9466億円を買い増した。残高は35兆円を突破、早晩、GPIFを抜いて日本最大の株式保有主体となることは間違いない。ちなみに民間最大の投資家である日本生命保険の保有額は約8兆円なので、その10倍近い圧倒的な存在だ。