指定の業者でないと原状回復したことにならないケースもある
孤独死では、清掃費用をめぐってのトラブルも多い。
大手ハウスメーカーでは、貸主が指定した下請け業者による修理でなければ、原状回復したことにならないと、賃貸契約書に記載されている場合がある。例えば、畳を汚してしまった場合なども指定した畳業者でなければならない。仕様の画一化という側面があり、ブランド化された物件は、設計段階から形や色などブランド指定の仕様の詳細が決められている。その通りにリフォームしなければならないことが、高額な請求金額につながるケースがあるというわけだ。そのため、清掃費用をめぐっては、しばしば大家と遺族の間でトラブルとなり、ひそかな社会問題となっている。
私は、常々一人で亡くなることそのものは問題ではないと訴えている。
しかし、本人が苦しみや生きづらさを抱えたまま、それを誰にも相談できずに、セルフネグレクトに陥り、孤立を余儀なくされる社会構造は大いに問題だ。
周囲に助けを求められれば結果は違ったかもしれない
孤独死の現場では、その結果として遺体もお部屋も痛ましい状態となり、周囲も大騒ぎとなる。生前に何らかの病気を抱えていても、社会から孤立したことで医療機関とつながっておらず、衰弱死したと思われる事例にもよく遭遇する。そのため、取材では生前に故人が誰かと関わっていたり、周囲に助けを求めていれば結果は違っていたと感じて打ちのめされてしまう。
新型コロナによって、人々のますます孤立と分断が進みつつあると感じる。地域の見守りを行う民生委員も高齢化していることもあり、高齢者の安否確認も希薄になり、数カ月と長期間遺体が放置されることがざらになってきた。
その背景には、「社会的孤立」の問題が横たわっている。筆者の推計では、わが国では1000万人が孤立状態にあるが、今後ますます社会的弱者が放置され、置き去りにされつつある世の中に進んでいるのは間違いない。
この孤独死という日本社会が抱える問題について、国などの行政機関が取り組むのはもちろんだが、いま一度、われわれ一人ひとりが自分事として向き合う時期が来ているのではないだろうか。