換気量に応じた暖冷房費用と室内空気汚染を比較すると…

村上周三氏、伊香賀俊治教授らは戸建て住宅を対象に、1時間に換気した量に応じた、暖冷房費用と室内空気汚染を比較しています。たとえば図表2の「0.1」は1時間で室内の10分の1の空気を入れ替える、つまり10時間かけてようやく室内の空気が1回入れ替わるということです。

換気はどれくらい行えばいいのか(東京、次世代断熱基準の戸建住宅を対象にした)

この換気量だと、暖冷房のコストは抑えられるものの室内の汚染濃度は高くなってしまいます。クイズの問いにあった「コスト」と「健康」を総合的に考えると、換気回数が1時間に0.5回、つまり2時間に1回、部屋の空気をすべて入れ替えるのが最も効率的という結果でした。したがってクイズの答えは④になります。

とはいえ、これまで述べてきたようにオフィスであれば基本的に1時間に1回、すべての空気が交換されるような仕組みになっていますし、住宅でも2時間に1回は室内の空気が入れ替わります。自宅に24時間換気システムがない場合は、浴室の換気扇を24時間つけっぱなしにしておけば1時間0.5回換気に近づき、部屋の空気が少しずつ入れ替わることも紹介しました。浴室の換気扇もない場合は、1時間に1回5分程度、窓を開けて風を通すといいでしょう。

空気が悪いと「脳内の疲労に差が出る」

注意点として、室内の空気の質は「換気」と「空気を汚す発生源」のバランスにもよるのです。換気量を上回るほど発生源から汚染物質が出れば、当然ながら室内の空気は汚れてしまいます。

たとえばオフィスでは1時間に1回、空気が交換される仕組みと述べましたが、人の多いオフィスであれば、「1時間に2回程度の換気が必要」と、早稲田大学創造理工学部の田辺新一教授が指摘します。

「我々が『知的生産性と疲労度』に関する研究を行うと、空気がよどんでいたり、高温環境下での作業は、脳内酸素消費量が多くなる。そして疲労感が増すことがわかったのです」

成人の場合、たとえ室内が高温や空気の新鮮度などが低下した劣悪な環境でも、本人が普段以上の努力をすると作業成績の低下が認められないことがあります。しかしその代償として、同じ作業を行ってもそのような環境では脳内酸素消費量が多くなる、つまり「脳内の疲労に差が出る」というから驚きです。