2021年末に事実上廃止となる「LIBOR」に関する内部情報

漏洩していたのは、顧客金融機関のロンドン銀行間取引金利(LIBOR)に関する内部情報である。LIBORは金融取引で国際的な指標として用いられる金利で、米ドルとユーロ、英ポンド、スイスフラン、日本円の5通貨を対象としている。世界的に業務展開している日米欧の大手銀行20行が日々、自行が無担保で調達できる金利を呈示して決められる。

LIBORを用いる金融取引は370兆ドル(4京円)という途方もない規模で、世界最大の米国債市場が17兆ドルであるのと比較すると、その巨大さがわかる。まさに国際金融のインフラなのだ。

ロンドン旧市街の金融街、シティで空を見上げる
写真=iStock.com/Nikolay Pandev
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しかし2008年のリーマン・ショック以降、金融機関ごとの信用力に格差が生じていたにもかかわらず、銀行が金利を低く操作していた疑いが浮上。2012年にはスイスの連邦競争委員会が捜査を始め、不正が明るみに出た。

これを境にLIBORの指標性が低下してしまい、英国の金融行動監視機構が銀行に対して2021年末以降はレートの呈示を求めない方針を示したことから、来年末に事実上廃止となる。

「LIBOR廃止後の指標金利をどうするか」の情報が流出

問題はその後だ。4京円もの取引の根幹となる指標がなくなることで、次の指標を決めなければならないし、新しい金融商品の開発も進めなければならない。LIBORを参照する取り決めになっている既存の金融契約もあらためなければならないほか、会計上あるいは、税務上の対応も必要になる。金融機関はどこも取り組みが遅れており、他の銀行や証券会社がどう対応するのか、出方を探り出したいところだ。

PwCコンサルティングが漏らしたのは、これらに関する顧客の内部情報だった。海外の銀行がLIBOR廃止後の指標金利をどれにしようとしているか、あるいは新指標を用いた新しい金融商品の中身はどうなっているか。これらは、国内銀行にとって重大な関心事であり、こうした情報が不正に提供された。筆者が入手したPwCの資料では契約のひな形になる適格金融契約をどうするかについて、個別の金融機関の取り組み状況が記されており、こうした情報も漏れた。

米投資銀行モルガン・スタンレーの内部情報が三菱UFJ銀行に漏洩しているほか、米シティバンクの情報はみずほ銀行や農林中央金庫、あおぞら銀行に渡った。LIBOR関連以外でも、海外投資銀行の内部情報が国内証券会社に流れたもようだ。