画面越しでは3倍増しのテンションで

その後も同じようなことが続き、「一体、何が悪いのだろう」と悩んだ私は、中継の上手な先輩に相談してみることにしたのです。

「中継では、私がその場で感じた感動をそのまま表現しようと頑張っているんですが、どうもうまく表現できなくて……」

するとその先輩は、こうアドバイスしてくれました。

「そのまま表現するから伝わらないんだよ。カメラを通して、自分の感動をそのまま伝えるには、3倍くらいオーバーに表現しないと伝わらないよ」

その場にいるわけでもない、自宅で何気なくテレビを見ている人の心をつかみ、そのままの感動を伝えるためには、3倍増しの表現が必要だということに、私は初めて気が付いたのです。

ビジネスでのやる気や熱意をテンションと言い換えるなら、オンライン上では自分が表現したテンションのうちの3分の1くらいしか伝わらないと思ってください。だからこそ、自分の思いを温度差なく伝えようと思えば、「テンション3倍」を心がける必要があるのです。

テンションUPでも声は落とす

テンションを上げる時に、注意しておくべき点があります。それは声の大きさです。

野村絵理奈『オンラインで伝える力』(ポプラ社)
野村絵理奈『オンラインで伝える力』(ポプラ社)

テンションを上げてください、というと、ほとんどの方が大きな声を出そうとします。対面の場合なら大きな声も自分の熱量を伝える要素になりますが、オンラインの場合は、声が割れてしまったりして、それが聞き苦しさにつながります。

テンションを上げようとすると、声も大きくなる傾向は確かにあるので、オンラインコミュニケーションでは、気持ちが盛り上がってきた時こそ、あえて声を落とす意識をもつことが大事だとも言えます。実際に、大きな声を出さなくてもテンションを上げることはできます。

例えば、テレビやスクリーンを通しても、その役を演じる役者さんが醸し出す感情はひしひしと伝わってきます。だからといって、必ずしも大きな声を出しているわけではありません。ときにはひと言も発しないことさえあります。つまりうまい役者さんほど、気持ちだけを上げるスキルをもっているのです。言葉には、〈言霊ことだま〉という不思議なパワーが内在しています。言葉とは単なる音声表現ではなく、伝えたいというエネルギーがそれにのせられることで初めて伝わるものなのです。

そんなの思い過ごしでは? と思うかもしれませんが、対面においても、伝えたいというエネルギーを言葉にのせることを意識して話すようにすると、普段よりずっと伝えたいことが伝わりやすくなることを感じるはずです。オンラインの場合は、そのエネルギーを3倍にする必要があるということなのです。

また、声と同じくテンションに引っ張られ、ジェスチャーが増えてしまうことにも注意が必要です。頻繁な手の動きや雑なジェスチャーはノイズとなり、小さな画面の中で強調され、相手はそれが気になって話に集中できなくなってしまいます。

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