小児科などの医療機関を受診する子どもの数が激減

こうした感染症の多くは飛沫ひまつ感染あるいは接触感染であり、保育園、幼稚園、小学校といった子どもが集団で生活する場面では避けられない感染症なのですが、COVID-19予防のために、大人だけでなく幼少児にもマスク着用、手洗い励行、そして最終的には休園に至る感染症予防策の徹底が、COVID-19だけでなく他の感染症の流行も抑えてしまったと考えられるのです。これは子どもたちの保育教育環境は、本来COVID-19だけでなくその他の感染症も広がりやすい環境であったということです。

COVID-19は子どもの医療機関受診にも大きな影響を与えています。COVID-19感染を避けるために小児科などの医療機関を受診する子どもの数が激減しています。

もちろん医療機関側にも一定の責任はあります。私が外来診療を行っている病院では、緊急事態宣言発令中は基本的に発熱している子どもは受診を遠慮してもらっていました。COVID-19がややおさまってきた現在でも、発熱があると別室でマスクだけでなくフェイスシールドと手袋という重装備の医師と看護師が診察をしています。ちょっとした風邪くらいでは受診を御遠慮ください、というのが本音かもしれませんが、何しろCOVID-19の初期症状が風邪に似ているのですから、発熱した子どもの親の心配は如何いかばかりでしょうか。

病院の廊下
写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn
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「受診控え」で払わなければならない大きな代償とは

こうした事態を前に私も含めた多くの小児科医が最も心配していることは、風邪と紛らわしい子どものCOVID-19を見逃してしまうことではありません。無責任に聞こえるかもしれませんが、子どものCOVID-19は前述したように元々軽症(あるいは無症状)が大部分なのです。

私たちの最大の懸念は、子どもが小児科医にかかりにくくなっていることです。その理由は、何の症状もない子どもでも、医療機関の受診を控えることで払わなくてはならない大きな代償があるからです。

まず予防接種が受けられないことです。子どもは頻繁に小児科医などの医療機関あるいは保健所で、予防接種を受ける必要があります。大人の予防接種といえば年1回ないしは2回のインフルエンザと、海外旅行時などに狂犬病や黄熱病の予防接種をするくらいです。COVID-19の流行が始まって約半年が過ぎましたが、インフルエンザの予防接種時期(秋~初冬)を過ぎてから流行が始まったので、大人は予防接種ができないための不便は今のところありません。