「こういう親にはなりたくない」と思いながら育った
そういう姿勢をどうやって身に着けたのかと尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「実は、私の母親は気性が激しくてね、7人兄弟の末っ子だったこともあって、ずいぶんわがままな人だったんです。私はこういう親にはなりたくないって、ずっと思ってきたんですよ」
シダックスのパート社員に年齢制限はなく、塩原は「仕事をいつまで続けるかはマネージャーさん次第」だと言う。塩原にとって、いったい仕事とは何だろうか。
「仕事は、自分を人間的に成長させてくれるものですね。感情的にならずに、人の話も聞いてあげて、いつもスムーズに仕事を進められるようになって……。なかなかいいんじゃないかなと思っているんです」
傘寿を目前にした女性から「成長」という言葉を聞くとは思わなかったが、塩原の中には、自身が人格的な完成に近づいているという実感があるのかもしれない。
唯一の趣味は月に何度かデパートに出かけて行って思い切り買い物をし、食べたいものを食べることだ。
「筋トレをしているから、どんなお洋服でもよく似合うんですよ」
服も食事も高級なものを選ぶが、子や孫に、買った物を押し付けることはしないという。