優れたリーダーはみんな配慮の達人
自分を認めさせたい一心だけで「私は有能です」と何度も言い続け、訴えたとしても誰も有能と思ってくれないわけだ。この競争社会で配慮なんて流行らないと思われるかもしれないが、それはまったく見当違いだと野田氏は指摘する。
「少しだけでも相手の視線を考えながらしゃべるだけで、うまくいくものです」
結局、今流行の空気の読めない人間を意味する「KY」ではダメということか。
「いえ、現在使われているKYはもっとレベルが低いんです。自分の感情を認知し、場に合わせる程度の能力にしかすぎません。例えば、午前中は天気が良くてウキウキした気分の日でも、午後、お葬式があって参列する場合は、悲しい気持ちに切り替えますよね。それができない人は明らかにKYでしょう。
私が言っている配慮とは、もっとレベルが高いものです。自分だけでなく、周囲の人々の気持ちや動きさえもいい方向に導く能力です。その意味では、優れたリーダーは、みんな配慮の達人といえます」
全体を見ながら配慮をするという行為は、最短距離で結果が欲しい人から見れば、一見遠回りのように見える。しかし、配慮の気持ちで、相手の目線に立って働きかけ、相手が気持ち良く仕事ができれば、結果的に組織全体は盛り上がり、その人の評価上昇につながる。コミュニケーションとしては、最高レベルだ。
「失敗しても、周りの反応を見ながら修正する。プレゼン術もPDCA(計画・実施・検討・対処)のサイクルで改良すればいい。日頃のリハーサルやイメージトレーニングが物を言うんです。準備や練習をしないと無駄なことばかりしゃべってしまい、周りから疎まれる。この準備や練習も相手に対する配慮なんです」
しかし、リハーサルといっても難しく考えることはない。誰でも身に覚えのある行動だという。
「家庭で奥さんと話すときに、不用意なことを言うと危険だから、真剣に考えるでしょう(笑)。こう言ったら、こう返される。じゃあそれは言わないでおこうとか、今は洗い物をしていて聞こえにくいだろうから、後にしようとか。まさにリスク回避の発想であり、相手に対する配慮ですよ。それだけで印象も変わる。それを職場で応用すればいいんです」
配慮のあるコミュニケーションのできる組織をつくるためにはまず、相手を知ることから始まるのだ。