ポジショニング上手は、セルフモニタリング上手

<strong>明治学院大学心理学部教授 佐藤眞一</strong>●1956年、東京都生まれ。早稲田大学大学院博士後期課程満期退学、医学博士。東京都老人総合研究所研究員、明治学院大学文学部助教授、ドイツでの研究生活を経て、現職。著書に『仕切りたがる人』(毎日コミュニケーションズ)など多数。
明治学院大学心理学部教授 佐藤眞一●1956年、東京都生まれ。早稲田大学大学院博士後期課程満期退学、医学博士。東京都老人総合研究所研究員、明治学院大学文学部助教授、ドイツでの研究生活を経て、現職。著書に『仕切りたがる人』(毎日コミュニケーションズ)など多数。

出水さんは無意識に自分を客観視してポジショニングを調整しているが、明治学院大学心理学部の佐藤眞一教授によれば、実はこの調整の技が重要だという。

「自分の振る舞いをもう1人の自分が見ていることを、心理学の言葉でセルフモニタリングといいます。自分を意識するもう1人の自分ですね」

つまりポジショニング上手とは、セルフモニタリングの能力に長けた人なのだ。しかし、セルフモニタリングが相手に見え見えだと、計算して振る舞っているように思われて逆効果になる。

「人間というのはおもしろいもので、『あの人は知性的だけど、性格が良くない』というふうに知性と性格に分けて捉えようとします」

と、佐藤教授は指摘する。

では、他人はどこを見てそういう判断をするのか。

「人間は、神経症性、外向性、開放性、協調性、誠実性という5つの基本的な要素を持っていて、それぞれの強弱は人によって違います。そのバランスで知性や性格などを判断されやすいのです」

ここでいう「神経症性」とは細かいことを気にするかどうか。「外向性」は、人付き合いなど社会性、社交性があるかどうか。「開放性」は、いろいろな知識などに興味を持ち、積極的に受け入れようとするかどうか。知的好奇心にも近い概念だ。「協調性」と「誠実性」は説明するまでもないだろう。

「5つの要素のうち、開放性は“知性”、残りの4つは“性格”につながります。開放性が強すぎると、他の要素が弱く見られ、『頭はいいけど、性格が悪そう』な印象を与えます。逆に、外向性が強いと、お調子者の烙印を押されやすい。誠実性や協調性ばかりだと、性格はいいけど知性が足りない、となりかねない」

いい印象を与えるには、目的に合わせて5つの要素を上手にアピールすることだ。例えば人前で発表する場合はどうだろうか。