歴史を振り返ると、大きな業績を残した偉大な政治家ほど「悪い」一面を持っている。『悪党たちの大英帝国』を刊行した関東学院大学国際文化学部の君塚直隆教授は、「たとえばイギリスのチャーチル首相はマハトマ・ガンディーについて、『ぞっとするほどの不快感を与える』と人種差別的発言をしている」という――。
チャーチル&ビッグベン
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絶対的な権力は絶対的に腐敗する

——近年、世界を指導者たちの顔ぶれを見ていると、なぜか「悪党」っぽく見える人ばかりのような気がします。

たしかに、そのような印象もありますね。しかし、歴史を振り返れば、これまでも「悪党」が権力を手にする例はたくさんありました。イギリスを代表する歴史家のアクトン男爵(1834~1902)は、「権力とは腐敗する傾向にある。絶対的な権力は絶対的に腐敗する」と述べています。

——指導者たちが「悪党」ばかりなのは、あきらめるしかないということですか。

そうではありません。アクトン男爵は上記の言葉に続けて、「偉大な人物というのは大概いつも悪党ばかりである」「より偉大な名前がより大きな犯罪と結びついている」とも述べています。

つまり、同時代の人びとから見ると「悪党」としか思えないような指導者でも、そして実際に多くの悪事を働いていたとしても、歴史的な視点で見ると、偉大な業績を残している人物というのは意外に多いということです。