“絶滅危惧種”のミドルを救う4つの方法とは
職場寒冷化により、いわば、“絶滅危惧種”とでもいえる状態になってしまったミドルを救うためには何が必要なのだろうか。
大きく4点があげられよう。
まず第一に、ミドルが役割発揮を行うために必要なスキルを習得するための研修や育成を会社が行うことである。研修や育成は、最終的な解決策ではないが、その第一歩ではある。選抜型の経営リーダー育成への注目に比較して、現場リーダーが仕事をするための知識獲得の機会は以前に比べて縮小している。これまで現場でのOJTに頼ってきたミドルの基本動作スキルの習得を、意図的な育成計画として再構成し、施策として実施していくのである。
第二が、意図的なジョブローテーションである。ジョブローテーションは、「経験の場をつくり出す」ための施策である。多くの企業で、仕事における専門スキルの強調などにより、職場内での柔軟なジョブローテーションが難しくなってきている。さらに、事業部制や分社化などが進むなかで、部門を超えたローテーションはさらに難しい。この点も意図的な経験付与施策として導入することが必要だ。
そして第三が、実務とマネジメントとのバランスを再構築することである。確かにミドルというのは集団(部門)の長であり、部門全体として成果を高めることが求められる存在なのである。本来の役割に力点を置けば、部門管理を行い、メンバーがさばけない異常事態に対処するのが、ミドルの役割である。
もちろん、プレーイングマネジャーの状態を避けられない以上、部門管理と、部下がもちこむ異常への対処だけがミドルの仕事だと言い切ることはできないかもしれない。でも、少なくとも「プレーイングマネジャー」という考え方は、ミドルマネジャー本来の姿ではないという認識は必要であり、ミドルがマネジメント業務を行えるような職務再設計をする必要がある。
そして、第四が、人材育成の行われる場としての職場の再生である。職場は、単に仕事スキルの獲得の場ではなく、他人とのコミュニケーション能力を高める場であり、また、チームワークや協働のやり方を覚える場である。
職場の変質により、OJTが機能不全に陥り、ミドルが力不足感をもっていることは先に見たとおりである。これに対して、off-JTをより計画的にしていくことに加えて、同時に職場のOJTを復活、再生させることにも注力すべきだろう。
ここにあげた対策は、単に研修などを通じて、ミドルの能力を高め、問題に対処するという考え方ではなく、環境への働きかけとミドルへの支援を重視した、期待される役割を発揮しやすい環境の整備が必要だという考え方に基づいている。
冒頭で述べたように、日本の企業が成長していた時代、ミドルは、新機軸を生み出し、実践のための方法を考え、組織を動員して、企業の成長を支えてきた。その意味で「戦略ミドル」だったのである。こうした競争力の源泉としてのミドルによる役割の遂行が、環境要因からのプレッシャーによって困難になってきた。職場寒冷化に歯止めをかけ、ミドルを再生させることは、多くの企業にとって必要なことである。
だが、こうした施策はある意味では対症療法である。長期的に必要なのは、新たな企業の姿のなかで、ミドルとは何をする存在なのかに関する議論を起こし、新しい戦略ミドルの役割像を構築し、競争力の基盤としてのミドルを復活させていくことだろう。
ミドルが本当に疲弊してしまう前にこうした動きが、いま求められている。手遅れにならなければいいが……。